さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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引退後銀弾話。



猫可愛がりのごとく

「僕の可愛い天使ちゃん!」

 

長兄であるシルバーバレットの弟妹の呼び名はだいたいそんな風であった。

実の父母がまぁそこそこ自分たちに素っ気ない分(とはいえちゃんと自分たちを愛してくれている)、彼が飽きるほどに『Honey(ハニー)』やら『Cuddly(カドリー)』やらと愛でているうちに、すっかりそう呼ばれるのが当たり前になってしまったのだ。

 

「ああもう可愛いなぁ! やっぱりあの服の方が良かったかなぁ!」

「兄さんは自分の服買わないの?」

「ん〜?……着れる服がまだあるからね! で、とにかく僕は可愛い子に貢ぎたい!」

「それ聞く人が聞いたらパパラッチよ、兄さん」

 

そう言ってシルバーバレットは妹の頭をぐりぐりと撫でる。

その仕草に妹はくすぐったそうに首を竦めた。

でも逃げないあたり、満更でもないらしい。

遠に長兄の身長を超えてしまった弟妹はみな、こうなると身を屈めるのだけど(それが父母には反抗期であっても!)。

 

「可愛いね…ふへへ」

 

 

現役時代でも、現役から退いても、シルバーバレットの胃の許容量はそう変わらない。

元より"疾さ"のために重さをギリギリまで攻めて減らしてだった体は余分な肉ひとつもなく、脚に至っては血管が目に見えるほどであったのだから本人はよくとも周りはそうはいかない。

 

「うぅ…」

 

一端のアスリートであったため栄養学云々の知識もあるにはあるが。

何とか必要な分だけは摂れるように拡張するまででも時間がかかったのに、普通の量の食事なんて…。

 

(ホントにみんな、これぐらい食べるの…?)

 

ヒトとウマを比べるとウマの方がヒトよりも肉体が強靭な分、よく食べるというのは常識なのは自分もトレセン学園に在籍していたから身をもって知っているけども。

 

「食うまで席離れんじゃねぇぞ」

「…はい」

 

流石のシルバーバレットも母には勝てぬ。

他の弟妹はみな既に食べ終え去っていった中で、長兄である自分と末弟であるサンデースクラッパだけがいる食卓。

まだ小山より少し大きい自分の皿と同じ野菜がちょこんとばかし残っている末弟の皿。

 

「…ね、スーちゃん」

「なぁに?」

「スーちゃん、まだ食べれる?」

「…?うん」

「なら、お兄ちゃんがスーちゃんの嫌いな野菜食べてあげるから「チ ビ ?」ヒッ!」

「…にーちゃ?」

「アッ、イヤ…」

「そら、スーも野菜食べな」

「や〜!!」

 

もそ、と食べる。

横を見ると何とか野菜をゴックンした末弟がちょっと目をうるうるさせながら食器を流しに持っていくところで…。

 

「はぁ、」





僕:
シルバーバレット。
弟妹溺愛系おにーちゃん。
しかし全然食べないので監視されたりなんだりされる。
食わないくせにトレーニングが現役時代とそう変わらないからね、仕方ないね…。
なお体の重さをギリギリまで削ってまで"疾さ"を求めていたがゆえ、脚をよく見ると血管バキバキだったり。えぐい。
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