さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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僕が亡くなる数年前の話。


生存IFのとあるイベントの話

「キミに来て欲しいんだってさ」

 

その日、珍しく騎手くんがそう僕に頼み込んだ。

騎手くんはもう騎手ではないけれど僕にとっては騎手くんなので。

 

「今年はキミがジャパンカップを勝った年から数えると20周年だからね。記念なんだって」

 

昔に比べると随分と白髪混じりになって、皺も増えた手が僕を撫でる。

 

「ははは、そんな顔しなくたって僕も一緒だよ」

 

…なら、いいよ。

 

【ある動画サイトにて】

 

『生放送なんて太っ腹だな』

『そりゃあ伝説の馬ですし』

『あの時代の集団幻覚(現実)だからな』

『にしてもめっちゃフラッシュ焚かれとるやんけ!』

『平然としすぎィ!』

『オグリん時もそうだったけど、やっぱ強いウッマは違うんですかねぇ…』

 

『ん?』

『えっ?白峰おじさん何で勝負服着てるんです???』

『おい待て何で乗ってる』

『えっえっえっ、走る?えっ?』

『何やってんだ白峰ェ!』

以降続く『何やってんだ白峰ェ!』コール…。

 

 

僕にイベントに出ると言われた日からバレットは自分で自分を調教していたらしい。

牧場の人もはじめは止めようとしたらしいが止まらないので渋々だったようだ(ちゃんと体の様子も見ていたが問題なかったよう)。

 

その話を聞いて僕もバレットを止めようとしたのだけど『え?乗るんじゃないの?』という目を向けられてしまい…、

 

「そう期待されたら乗るしかないよ、ねぇ?」

「ブルっ!」

 

バレットの毛並みはもうすっかり白くなって時が経ったのを感じさせる。

でも、肉体はあの頃のままほぼ変わっていない。

僕の方はといえばおじいさんなので軽めにしてくれるように頼んだのだけど。

 

「行けるかい?」

 

そう聞くと当然というように返事の嘶きがあり、

 

「まぁ…、久しぶりに楽しもうか」

 

 

『えぇ〜???』

『何で普通に走ってるんですかねぇ!?』

『これ2歳馬くらいまでならいい勝負できるんでは?』

『もう30歳なんだよなぁこの馬』

『規格外過ぎる〜』

『流石に笑うしかない』

『白峰(甥っ子)ニコニコで草。止めろや』

『ストッパーが誰もいない定期』

 

 

「やっぱりバレットは凄いねぇ」

 

走り終えたあと、そう褒めると『そうだろうそうだろう』という風に撫でろと頭を寄せてくるバレット。

久しぶりに彼の背に乗り駆けたわけだが(牧場に訪れた時に毎回乗馬程度には乗っていた)、

 

「僕のためにスピード落としてくれたんだよね」

「フルル…」

「そう?」

 

ごめんね、と言うと『そんなに過大評価するんじゃねぇやい』とでもいう風にバレットが緩く首を振る。

 

「そうだね、僕もおじいさんだけれどキミはもっとおじいさんだもの」

「ブルっ!」

 

事実を言っただけなのに、カプっと甘噛みされてしまった。

それにだんだん力が入ってきて慌てて謝った。

…事実を言っただけなんだけどなぁ。

 




僕:30歳のおじいちゃん馬。
なおこの年齢でも2歳馬くらいまでならいい勝負できるのでは…?と観客からおののかれた模様。
やっぱり騎手くんが一番の相棒だな〜。
…ここだけの話だがおじいちゃんになったので現役時代よりも脚の速さは遅くなっているけど、それでも騎手くんの体を慮ってスピードを落としていたらしい。落としていてアレ。…それとちょっとだけ領域の片鱗が見えていてもいい。(シングレのオベイさんみたいな感じで)


騎手くん:元騎手・元調教師の白峰透おじさん。
こっちもおじいさんだが僕に乗れるとあって体を鍛え直した。
シルバーバレットが大好き。
なおシルバーバレットに関しての奇行が多すぎて、その奇行をまとめた『何やってんだ白峰ェ!』という動画シリーズがある。

【白峰透のあだ名一部抜粋】
終身名誉銀弾騎手
銀弾大好きおじさん
銀弾ファンクラブ会員2番(1番は馬主)
銀弾フリーク
テレビにて自らの甥と銀弾についてのクイズ勝負を行い完勝する男
普通に引退後の銀弾の馬体重を把握している男
銀弾のストーカー
銀弾ガチ勢
知らぬ間に銀弾一族に組み込まれてそうな男(満更でもない)
銀弾産駒白峰透
銀弾が大好きすぎて奇行に走る男
無敵の弾丸の射手
などなど。


騎手くん(甥):運命の相手はシルバーチャンプだがそれはそれとしてシルバーバレットのことが大好き。
叔父である透と同じように銀色の一族+シロガネ一家に対して、よく奇行を行っているのでコイツも『何やってんだ白峰ェ(甥)!』という動画シリーズがある。
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