いつか、本気に。
とたとたと帰路に着く。
その足取りがいつもよりふわふわしているのは…きっと、あの光景を見てしまったからだろう。
『好きです!付き合ってください!!』
それ自体はありがちな告白劇だった。
夕暮れ時で、赤っぽいオレンジに染め上げられて、校舎裏はロマンチックな雰囲気が漂っていた。
「あるんだぁ…ああいうの」
まぁ、珍しくはない話だという。
そりゃあ同年代の子の大半が寮生活する学園だ、中にはそういうこともあるだろう。
しかし、いざ目の前で見てみると……なんだか妙に落ち着かない。
「はぁ……」
ため息がこぼれる。
別に、羨ましいとか妬ましいとか、そういうわけじゃない。
ただ……なんていうか、ちょっとだけ。
「……帰ろ」
とはいえ、いつまでもここで突っ立っているわけにもいかないので、僕は自分の部屋があるアパートへと足を向けた。
*
「あ〜…、なるほど」
それから、なんとなく気になってパラパラと生徒手帳をめくったところ。
「不純異性交友は、とはあるけど」
法律の穴をついた、みたいな?
「恋愛禁止、とは書いてない。……と」
生徒手帳にはそう書いてあった。
つまり、別に悪いことではないのだろう。
トレセン学園に通う生徒というのは、ウイニングライブ等の形式上、どこかアイドルのような立ち位置に立たされる。
そのためメディアの目もあるから、ひっそりとするだろうし。
「まぁ、僕には関係ないか」
*
そういうのが気になるお年頃。
なのでどこからか流れてきた噂を、さも自分が知っているかのように話す。
「ねぇ、聞いた?あの話」
「なになに?」
「あれよ、あれ!例の……告白のやつ!」
「あー、アレね。うん、知ってる知ってる」
「それでさ〜……」
とまぁ、そんな感じで広がっていく噂話。
ただ、僕の耳には入ってこない。
というのも、僕は今それどころじゃないからだ。
(あ゛ー……)
机に突っ伏して呻く。
(いやいや、アレはただの戯れだろう?この年齢特有の!)
そう自分に言い聞かせるが、どうにも腑に落ちない。
(だって……あんなの)
思い出すのはあの光景。
夕焼けに照らされた教室。
全身を夕焼けに赤く染めて、照れたように微笑むあの子の姿。
そして、困惑する僕の手を取って、恭しく───。
「〜〜〜〜!!!!」
思わず机を蹴りあげてまで勢いよく立ち上がりそうになったのを、太ももを強くつねることで制する。
「痛っ……!!」
じんじんと痛む太もも。
しかし、おかげで少しは冷静になった。
(落ち着け、落ち着け)
そう自分に言い聞かせる。
(別に、あの子に明言されたワケじゃ…)
そうだ。
あんなのはただの遊びだ。
よくある告白ごっこだ。
(だから……僕が気にするようなことじゃない)
そう自分に言い聞かせて、僕は再び机に突っ伏した。
僕:
シルバーバレット。
いちおう照れるぐらいの心はある。
でも「ないないない!」って思ってる。
だが…?