…みんなは、そう思わないみたいだけど。
『コイツちっっさ!』ということに意識を取られていたため、「よろしく」と伸ばされた握手の手を何の抵抗もなく取ってしまった。
いつもなら払い除けるか何かしたはずなのに、俺はあっさり手を取り、ぶんぶんと振られている。
「テメェ、のお名前、は?」
「シルバーバレット」
「
「よく言われるよ」
俺よりも、頭ひとつぶん低いウマには、深々と刻み込まれた火傷跡があって。
にこりと微笑むたびに無事な方の灰銀と、白く濁ったふたつの色の双眸が、ゆらゆらと揺らめいていた。
「俺はサンデーサイレンス」
「…。あぁ、知ってる」
「そうか。…俺も有名になったモンだナ」
にや、と笑う。
後に聞けば、コイツが俺のことを知っていたのはコイツの一番下のきょうだいの父親が俺であったからであって。
「よろしくね、サンデー」
それが、ファーストコンタクト。
*
それから、事ある毎にシルバーバレットというウマは俺のことを尋ねてくるようになった。
「仕事のついでで」と本人は言っていたが、毎度毎度久々に会う幼子を相手にするようにそこそこ値の張る菓子を持ってきて、「一緒にどうだ」と誘ってくる。
そして、俺はそれを断ることをしなかった。
……いや、できなかったというべきか。
シルバーバレットは俺より小柄ではあったものの、だいぶ年上だし、大家族の長子でもあるからか、上手い具合に誘導してきて。
「美味しい?」
「あぁ」
「よかったぁ」
いつもしている眼帯は、俺と会う時は外されていて。
前髪があってもチラリと見える火傷跡が、その白い肌によく目立った。
「なァ、」
「なぁに?」
「なんで、俺だったんだ」
「?」
「…お前なら、誰とだって友だちにさ、なれるだろ」
伸ばした手はいとも簡単に受け止められる。
指先で撫でるソコは思いの外つるりとしていて、滑らかな肌触りをしていた。
「そう、かな」
「あぁ」
「……でも、僕はキミでよかったよ」
「?」
「だって、キミは優しいから」
……俺はシルバーバレットに優しくした覚えはない。
ただコイツが勝手に懐いてきていただけで、俺はそれを拒まなかっただけ。
それでもシルバーバレットは俺に会うたびに嬉しそうに笑っていて、俺もその笑顔にどことなく安堵していた。
・
・
・
引退したら、面倒くさくなってしまった。
何がって、自分を『凄いヤツ』だと見てくる周りの目に。
みんなが僕を、
本当の僕なんて二の次で、
だから。
「テメェ、のお名前、は?」
そう、臆しもせず、尊敬の眼差しもなく、告げたのはキミだけだったから。
「シルバーバレット」
僕は、キミと友だちになりたいって思ったの。
僕:
シルバーバレット。
自分を自分として見てくれる人と友だちになりたかったウマ。
なので周りからめちゃくちゃ注目されている自分に、唯一何の感慨も抱かず握手に応じてくれたあの子。
…銀弾好感度メーターがあがった!