さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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捕らえたのなら食い尽くして。



捕らえたのは、蜘蛛の糸でなく

『はじめまして、【飛行機雲】くん』

 

そう言って僕の頭を撫でたのは、父の友人だという人。

少し白がかった芦毛の長い髪を編んで、ゆるりと緩む眦がどことなく中性的に見せていたけれど、僕の頭を撫でるその手は確かに大人の男の人であった。

 

『今日はね、キミのお父さんと約束があって…。だから、少しの時間キミのお父さんのことを借りてもいいかな?』

 

その言葉に僕はこくんと頷いた。

別に断る理由もなかったし、この人の姿を見て『あぁ、この人が父が最近ソワソワしていた原因なんだ』とすら思っていた。

 

『ありがとう、【飛行機雲】くん』

 

その人は僕の頭をもう一度撫でると、父に向かって歩いていって。

少し照れくさそうに父の隣に並ぶと、そのまま二人で歩き出した。

僕はその二人の後ろをちょこちょことついて行く。

 

『ほら、飛行機雲くんもこっちにおいで』

 

そう言われて、僕も父の友人であるその人の手を取った。

 

『おそい』

『はは、ごめんよレイ。…でもパパと一緒に行けばよかったじゃないか』

『…』

 

そして出会ったのが…先輩で。

少しキツい目付きをしながらも、人見知りのようでその人の後ろに隠れては僕と父のことを睨んでいた。

 

『ほら、レイもちゃんと挨拶しないと』

『……よろしく』

 

 

「お前、俺の親父に会いたいって中々言わないよな」

「普通はそうでしょう?」

「まぁ、な」

 

会いに行こうと思えば会いに行けるけど。

たぶん歓迎だってしてくれるだろうけれど。

 

「でも、なんか……。お前から親父の話が出ると、こう……モヤモヤするから。ま、話に出ないならそれはそれで」

「は?」

「?」

 

確かに先輩のお父さんはミリョクテキな人だ。

活躍時期が長かったのもあって交友関係も広いし、頼まれればイベントだって快く出てくれるから様々だって話も聞いたことがある。

でも、先輩が自分から先輩の父親の話を出すことは滅多にない。

 

「先輩って、本当に鈍感ですよね」

「あ?」

 

だって、それって。

 

「……嫉妬みたいじゃないですか」

「はぁ!?」

 

先輩が素っ頓狂な声を上げた。

そんな先輩に僕はクスクスと笑うと、先輩の手をぎゅっと握って歩き出す。

 

「ちょ、おい……っ!」

 

先輩は僕の手を振りほどこうとしていたけれど、僕が離さないようにギュッと握ると諦めたのか大人しくなった。

 

「大丈夫ですよ〜。僕は先輩のことだけしか見てませんって」

「…それもそれで、どうかと思うがな」

「えー!?」

 

…バカな先輩。

いくら貴方の父親が────蜘蛛のような御方であっても。

 

(僕を捕らえたのは、貴方でしょう?)

 





【飛行機雲】:
後輩。
【銀色の激情】の父である【銀の祈り】のことは『すごい人だな』と思っている。
でも【飛行機雲】の目を焼いたのは【銀色の激情】だからね、なびくことはないんだな。
それに…。

────【銀の祈り】さんには、もう夢中の人がいるので。
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