さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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「幸せって、なんでしょう?」
「わからないんです」
「でもきっと、それが答えなんです」
「だから───」




「ねぇ、」

「何でもは知らないよ。知っていることだけ」

 

ある時から、『アレ?これ前にしたことがあるような』、『同じ会話前もしたような』とデジャヴを感じるようになった。

それはよくよく周りを観察すると時おり『アレ?』と困惑する表情を見せるウマがいることを見るに、どうやら似たような者はいるらしい。

 

「あまり、考えすぎるものではないよ」

 

そう静かに告げたのは、みんなの人気者であるシルバーバレット。

…いま思えば、"みんなの人気者"であるはずなのに、かのウマがひとりでいたことを可笑しく思うべきだったのだろうが。

 

「この世界は、幸せだからね」

「ずうっと続く。終わらない」

「多方にとっちゃあ『楽園』らしい。僕は、走れさえすればどうだっていいけれど」

 

茫洋と言葉が続く。

 

───楽園。

「ああ、楽園だ。幸福しかないんだと」

「みんなが幸せで、みんなも幸せ」

「…それでいいのさ」

 

考えすぎるのは体に毒だよ、とシルバーバレットは去って行った。

───楽園。

その響きに、何故か心がざわついた。

 

 

気づかない。

気づけない。

終わらない世界。

それを、『幸福』と呼ぶかは人それぞれだけど。

 

(僕の周りは…みんな『幸せ』だと言う)

 

寝て覚めたら違う時間軸なんてよくあって。

昨日まではあの子が注目されていたのに、それがウソのように。

昨日まで大活躍だったあの子が、期待の星である新人に激励の言葉をかけていたりだとか。

昨日まで、僕の隣を教えを乞うていた子が、遠にデビューしていたりだとか。

 

(………………)

 

みんな、『幸福』であると信じている。

何度繰り返しても、先に進めずとも。

『先に進めない』と()()()()()()()()()()

いや、

 

()()()()()()()、か…)

 

僕以外にも現状を知覚している者はいる。

その最たるは生徒会長であるシンボリルドルフや同期であるミスターシービーにカツラギエース。

その三人は僕と同じか、またはそれ以上に。

「今は××というウマが主役だ」と毎度教えてくれる姿。

初めて"切り替わった"際に混乱する僕を宥めてくれたのはこの三人だ。

シンボリルドルフは、僕が『おかしい』と気づく前から、僕の様子を気に掛けていた。

それが何故なのかは知らないけれど、彼女は僕の味方であるらしい。

ミスターシービーは……まあ、アレだ。

僕はあまり彼女のことが得意ではない。

何せあのウマときたら、事あるごとに不可解なことを言ってくるのだ。

「シルバーは、幸せ?」とか。

「シルバーが求めるものはなに?」とか。

自分は現状を『幸せ』だと言うクセに?

またカツラギエースは、『おかしい』と気づいた僕に対して「良かった」と言った。

何が良かったのかは知らないけれど、安堵したように笑って僕に言うから。

 

「…『幸せ』、か」





「一緒に探してくれますか?」

僕:
シルバーバレット。
気付いている。
でもこの世界が『幸せ』であろうことも、認めている。
時間軸が右往左往するがどうなったって先に進めないのだろうなぁ…と考えたり考えなかったり。
…受け入れられたら、楽なんだろうけどねぇ。
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