さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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【白の一族】が最初から競走の世界にいて名家となり、そして没落しての…という√を辿った世界線の話。



あるIFの話

そのウマが、かの【白の一族】の血を継ぐと公になった時、トレセン学園は水面下でにわかに沸いた。

なにせ【白の一族】はその圧倒的な競走能力をもって多くの名バを輩出した名門中の名門。

その血を継ぐウマが、このトレセン学園にいるとなれば、話題にならないわけがない。

 

「…そして同時に、【白の一族】の血をひくウマは、必ずや大成するというジンクスが生まれた」

「大成……って、【白の一族】は総じて気性が荒いと聞きましたけど…」

「あぁ。だがその欠点があろうとも──」

「【白の一族】の競走能力は魅力的だった?」

「そうだ」

 

かつて隆盛を誇ったその一族を誰もが求めた。

それには【白の一族】が持っていた様々な繋がりを欲しがったのもあっただろうし、【白の一族】の者を家に有すると幸運が舞い込む、なんて眉唾な話もあった。

がしかし。

 

「そして、いつしか【白の一族】は瓦解した」

「…はぁ、」

「"アレ"は、…まるで悪夢のようだったよ」

 

──"アレ"、そう称するほどに。

【白の一族】本家も、【白の一族】を迎え入れていた家も。

全てが等しく、最終的には無に帰した。

「行かないでくれ」と縋っても、まるで霞のように消え失せて。

そして、いつしか【白の一族】は瓦解した。

そして、───誰もいなくなった。

それが当たり前で、夢のように"かつて"を思い出していたところで…。

 

 

その家に生まれたウマたちがすべからく競走の世界に入っていたのは、ひとえに「()()()()()()()」と家族を盾に脅されていたからだ。

その頃には遠にヒトよりもウマの方が多い家ではあったけれど、幼い頃から染み付いてしまったトラウマがそう簡単に消えるはずもなく。

「ウマは走るのが当たり前」という強迫観念に縛られて、そして、その"当たり前"を強要されて育った者たちは、体の強い弱い関わらずトレセン学園に入学させられた。

競走バとして大成せずとも、【白の一族】というネームバリューで他の名家に売りつける。

 

「【白の一族】の者なら必ずや大成する」

 

そんな夢物語に縋って、多くの家々は喜び勇んで思惑通りに引き取り。

しかし、その"当たり前"が代わり映えのない日常になった時。

───反乱が、起こった。

 

「いかないで、いかないでくれぇ…!」

 

あるひとりのウマが先導し、【白の一族】本家をムチャクチャにした後、他の家に引き渡されていた血族のウマを徐々に連れ出して行き。

どこかへ消えてしまった。

まるでハーメルンの笛吹のように。

あとには、【白の一族】に帰ってきてくれと縋る者ばかりが……。





【白の一族】:
元は押しも押されぬ名家だったが、その実態は極小数のヒトミミに支配されたウマにとって地獄なお家。
幼き日から課されるトレーニングは非常に過酷で、しかし家族を人質に取られるため逆らうこともできない。
周りからは【白の一族】のウマを家にいれることが一種のステータスとされていた。
だって、気性難っていう欠点を帳消しにするぐらいに競走能力や繁殖能力が群を抜いていたからね。
そういうとこから『【白の一族】を手に入れると幸せになれる』みたいな噂が流れたのかも?
そんなお家だったので一族のウマがほぼ消息不明になったところに現れた"あるウマ"を、みんな…?

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