さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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自由で、ありたいのだけど。



天衣無縫の止まり木

僕とミスターは普通に仲がいい。

基本は僕が振り回されている方だけれど、食育や服装の方面に関してはミスターが僕の世話を見ていることもあって、よく一緒に買い物に行く。

 

「うん。とりあえず今日のところはこれでおしまいだね」

「そっか。ありがと」

 

僕がそう答えると、ミスターは満足そうに頷いた。

…で、

 

「じゃあ今日もシルバーのご飯が食べたいな。いいお肉買ったでしょ?ね?」

「…ハイハイ」

 

走ること以外には無趣味寄りな僕の散財と言えばもう食事関係しかなく。

読書も通っている場所が天下のトレセン学園だ。

トレーニング関係の書物の方が多いとは言え、普通の娯楽系の本も揃っている(まぁ取材とかもあるから、流行りを知っておくに越したことはない)。

それはさておき。

 

「よし、今日も頑張りますかっと!」

「やったぁ!」

 

 

トレセン学園に入るぐらいの年頃には、自分が周りとは違うという自覚はあった。

折れることも、曲がることもなく己が決めた道をいく。

それが中々に難しいらしいと気づいた時には…ミスターシービーはひとりだった。

でも、それを寂しいとは思わず。

逆に自分の好きなようにできるから楽だとすら考えていた。

 

「〜♪」

 

ミスターシービー当人は知らぬことだが。

"ミスターシービー"というウマには幼い頃から、どこか近寄り難い雰囲気があった。

はじめは皆その雰囲気に惹かれるけれど、時間が経てば経つほど、その雰囲気に気圧されてしまう。

それは彼女があまりにも"綺麗"で、同時に"恐ろしい"からだ。

まるで背中に翼でも生えているかのように『自由』に生きるミスターシービーの姿を見ていたら……誰もがいずれ、きっと 。

 

「シルバー♪」

「わっ!?」

 

だが、そんなミスターシービーにも例外がいた。

それが今現在進行形で抱き着いている小柄なウマ-シルバーバレット。

初対面の時からどうにも放っておけなくて、今に至るまでミスターシービーはシルバーバレットを構い続けていた。

 

「もー、いきなり抱き着いてこないでよ」

「えへへ♪」

 

この顔に弱いのだ。

普段はあまり笑わないくせに、自分が関わった時はこうして仕方なさげでも、笑うから。

 

(……ホント、ずるいなぁ)

 

他の誰より自由でいたいのに、そんな顔をされたら自由でいられなくなる。

どこまでも飛んでいけるはずの自分が、たったひとりの傍に、()()()()()…。

 

「なんて、ね」

「何が?」

「いや、なんでもないよ」

「…ふぅん?」

 

にこりと笑みつつ、その腰を抱く。

…嗚呼、誰にだって。

 

(渡しや、しない)





【ターフの演出家】:
ミスターシービー。
この方もこの方で『普通』とは違うウマ。
誰よりも『自由』であり、自分が決めた道なら折れず曲がらず邁進するタイプなので憧れを抱かれつつもどこか不可侵…みたいな。
多分ネームド組ぐらいにならないと関わるのにも一苦労しそう。
ただ"在る"だけなのに周りを気遅れさせる感じ…。
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