さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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母方の血が出た話。



愛ってバイオレンス

ぎゅう。

それは傍から見ればもう見慣れた光景ではあったが、ギュンと打たれた拳がいつもの情景とは丸っと180°違い、周りの目を見開かせる。

 

「……ッ、」

「……」

 

思いきし打たれた裏拳はクリーンヒットに後ろから抱き締めていたグローリーゴアの鼻辺りを直撃し、鼻血がボタボタと垂れ落ちる。

 

「…もう!」

 

血を垂らしながらもハンサムはハンサムのままで。

真顔で歩いていく先程の裏拳の主犯-サンデースクラッパとは裏腹に困ったという苦笑をしながら追いかけていく姿はもはや尊敬に値する。

何故なら、サンデースクラッパの目は黒く、深く凪いでいるので。

何も感情が見えない。

 

「あー、スー?」

「なに」

「その、アレだよ……あんまりああいうことは人が多いところでしちゃダメだと思う」

「……ああ、そうだね」

 

そうは言うものの反省の色は見えずにサンデースクラッパは歩みを止めない。

そんな姿を見てグローリーゴアは困ったように頭を掻くと、彼の腕を掴む。

 

「スー」

「あ゛?」

 

そして振り向きざまに。

掠めるだけ、だったのだけどそれもお気に召さなかったようで今度は鳩尾に真正面から拳がクリーンヒット。

 

「ッ、」

 

結果、今度はちゃんとグローリーゴアの体が崩れ落ちて…。

 

 

「……ごめん、ごめんねスー」

 

サンデースクラッパはしゃがみ込みグローリーゴアの顔を覗き込むといつもの調子でヘラヘラと笑う相手を見る。

そんなだから…パパラッチでありもしないでっち上げをされるんじゃないか?…と、サンデースクラッパは思う。

 

「スー、ごめんね」

「……大丈夫」

「怒ってる?」

「怒ってないよ」

 

ただ、悲しいだけ。

キミが、素敵な人であることは知っている。

何よりも、誰よりも理解している。

けれど。

 

『僕には、キミだけだ』

 

そう言って、自分を負かして。

負かして、()()()()()奪い去った癖に。

 

『キミは、僕のモノだ』

 

そう言って、自分を負かして。

負かして、()()()()()奪い去った癖に。

 

「スー」

「うん」

「ごめんね」

「……うん」

 

ああ、なんて酷い人。

 

(……また、やってしまった)

(僕は一体どうしてしまったんだろう)

(彼は何も悪くないのに)

(僕が勝手に好きになって勝手に嫉妬して勝手に暴走しているだけじゃないか)

(ああ……それでもやっぱり)

 

堕ちてしまったが、()()()()か。

 

「スー、ごめんね」

「……いいよ。大丈夫」

 

サンデースクラッパは立ち上がるとグローリーゴアの手を取って歩き出す。

その手を振り払うことはせず、グローリーゴアも引かれるままに歩いていく。

 

(嗚呼なんて!)

(…なんて、愚かで惨めなんだろう)

 





【戦う者】:
サンデースクラッパ。
僕から僕を奪い去ったからには、大切にして。
今回はちょっとご機嫌ナナメだった。
案外物理が強い。
でもチョロいのはチョロい。

【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
怒らせちゃった。
本人としては【戦う者】にしか興味がないのだが、普通にしてると普通に美形なのでよくパパラッチされる。
でも毎度毎度「誰ですか?その人」するので…。

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