さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ちょっとした噂になってた。


◆『顔のない幽霊』

「シルバー。キミ、『顔のない幽霊』って怖がられてるみたいだよ」

 

1人になりたい時にいる空き教室にズカズカと入り込んで、開口一番にそう言い放ったのはミスターシービーだった。

じろりと見上げるも相変わらずフフンと笑われるだけ。

 

「夕暮れにグラウンドを走ってる影があるとか、黒い影にとんでもない速さで抜かされたってさ」

 

歩いてきたミスターは壁に寄りかかる僕の隣に座る。

早くどこかに行って欲しい。

 

「それにしても私だってキミの顔が見てみたいんだけどなぁ、シルバー」

 

伸ばされた手をガシリと掴む。

彼女の手が掴もうとしたのは僕の被っているフードだ。

特例で許してもらったフードを僕はずっと被っている。

火傷痕を見られるのが嫌なのだ。

 

ギシ、と手首を掴み続けていると「いてて…」と声が聞こえ離した。

 

「容赦ないね」

「人の嫌がることをする方が悪いんじゃあないかい」

「今日の調子はどうだい」

「問題ないです、先生」

 

人通りの少ない角部屋が僕たちの部屋だ。

先生はいつもと変わらず書類仕事をしている。

先生は僕のトレーナーだ。

トレーナー業が長い先生はよる年波には勝てず最近眼鏡をかけ始めた。

僕が選んだ眼鏡を。

 

「ちょっと待ってられるかい、バレット」

「はい、先生」

 

待ってます、と声をかけて部屋の中にあった指南書を読んでおく。

体が小さくて馬鹿にされていた僕を、先生だけが欲しいと言ってくれた。

僕はその期待に応えたい。

僕は先生が喜んでくれることが一番嬉しい。

僕は先生が悲しむことが一番嫌だ。

 

「僕、頑張りますよ、先生」

「何か言ったかい、バレット」

「いいえ、何も」

「ここにいたんですね、師匠〜!!」

 

大きな声に思わず食べていたおにぎりを詰まらせる。

お茶で慌てて流し込み、痛くなった喉をさすっていると近づいてくる影。

 

「こんにちは師匠!」

「…僕はキミの師匠にはなれないっていつも言ってるだろ」

 

彼女は僕に師匠になって欲しいと会う度に言ってくる奇特な後輩だ。

憧れているのは『オグリキャップ』とか何だとか言っていたが。

なら憧れの人に師匠になってもらえばいいと言ったのだが聞いて貰えず、

 

「私は師匠に!私の師匠になって欲しいんです!!」

「嫌だよ」

 

今日もあしらうのに、この子は諦めないのだろう。

隠れ場所を転々としているのに、この子は何故かその場所を探り当ててくるのだからたまったもんじゃない。

 

「はぁ…」

「あ、師匠!その溜め息はオッケーってことですか!?」

「答えはノーだよ、バカヤロウ」




後輩:僕に師匠になって欲しいと頼み込んでくるウマ娘。
それなりに将来を期待されている。中等部。
本人はオグリキャップに運命を感じており、それを知っている僕にはそちらに行けばいいとあしらわれる日々。
史実世界ではちょっとした関係が僕とある模様…?
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