さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ちょっとした話。



ハード違い

まぁ、もしも。

…もしも、の話だが。

己が体が、"かのウマ"の依り代として一番の適合率で、そのため己が体を犠牲にすれば"かのウマ"が蘇るとしたとして。

───あなたは、どうしますか?

 

 

A.【銀色の運命】の場合

 

「そうなったら…兄さんはボインボインのバインバインの体になっちゃうわねぇ」

 

クスクスとそう告げたのは"かのウマ"の全妹であるシルバフォーチュンだ。

美魔女というか、もはや不老不死の八百比丘尼のように年齢不詳のその美貌は今日も今日とて健在である。

 

「兄さん、驚きそう」

 

【銀色の運命】は、ぽそりと呟き苦笑する。

"かのウマ"が復活するのならば、喜んでその身を捧げようと───。

 

A.【銀色の王者】の場合

 

「その時はその時です」

 

そう断言したのは"かのウマ"にとって甥にあたるシルバーチャンプだった。

現役時と比べると些か落ち着いた調子になった彼は、しかし苦い表情で自らの体を慮る。

 

「復活は喜ばしいことですが、それで"かの方"の体が損なわれてしまうようなことはあってはなりませんし」

 

【銀色の王者】は、そうつぶやく。

そして、

 

「もう満足に走れなくなった体でも"かの方"が喜んでくれるなら…もしかすると、ですね」

 

 

A.【銀の祈り】の場合

 

「クローン体とかに突っ込めるようになればいいのに」

 

開口一番、"かのウマ"にとっては姪孫にあたるシルバープレアーはそう告げた。

その言葉口から見るに、"かのウマ"に己が体を犠牲に捧げたい、というつもりは毛頭無いらしい。

 

「だってほら、ね?」

 

にこり、とシルバープレアーが笑う。

 

「【英雄(あの子)】が"かの方"の虜になっちゃ…イヤだしね!」

 

 

A.【銀色の激情】の場合

 

「絶対ヤダ」

「そもそも脚質から合わねぇじゃん。俺は追込みだけどアレは大逃げだし」

 

ケッ、と吐き捨てるように告げたのはシルバアウトレイジ。

"かのウマ"にとって曾姪孫にあたる、まだ歳若いウマだが、その気性は若き日の祖父【銀色の王者】とよく似ている。

 

「復活しようがどうしようが、アレは俺の敵だ」

 

そう断言した彼は、しかし次の瞬間にニヤリと笑みを浮かべた。

 

「俺は、大一番の申し子だからなァ」

 

 

A."████"の場合

 

「え?いや、そんなの嫌に決まってるじゃん」

「誰かを犠牲にしてまで戻りたくないぜ?さすがの僕も」

「そもそも僕ってもう過去の遺物だろ?何度掘り返したって出てくるのは欠片だけなんだから、もうさぁ、いま頑張ってるあの子たちを見てやってよ」

 

…はぁ。





ハードが違うとしても、戻ってきたことにはみんな喜びそう。
でもそれはハードとなった人を大切に思う人々を振り切った自己満足でしかなくて、でもハードとなった人にとっては「戻ってきた」ことが『幸せ』であって…。

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