でも無自覚。
「いつか刺されますよ」
その言葉に、シルバアウトレイジは不思議そうに首をかしげた。
「刺される…とか、ンなまで俺を好きになるヤツいるわけないだろ」
はァ?とでも言う風に、シルバアウトレイジは呆れ顔で続ける。
「ソレ言うならお前の方じゃないか?」
「いやいや」
「へ〜、ほ〜?ファンの女の子がよくきゃあきゃあ言うプリチーな顔してんのに?」
「……はぁ、」
シルバアウトレイジは心底不思議そうな顔のまま。
その顔を見て、苦言を呈した張本人である【飛行機雲】は、『あ〜……こりゃダメだ』というように肩をすくめる。
「?」
シルバアウトレイジはまた不思議そうに首をかしげるが、【飛行機雲】はもうそれに取り合う気は無いようで。
「ま、いいです。とりあえず、」
そう言って、【飛行機雲】は立ち上がった。
そしてそのまま歩き出すと、シルバアウトレイジの隣にとすんと座る。
「先輩はにぶいので、僕が代わりに良いか悪いか判別しますよ」
*
シルバアウトレイジというウマは、良いヤツであった。
よくある好感度上昇イベントのように、雨の日に捨て猫を拾わずとも普段のあれそれで好感度が上がっている、という具合に。
だからファンクラブよりかは、『あの人の素敵なところを知っているのは自分だけ』という、そういうしちめんどくさい『好き』であった。
──だがしかし、この【飛行機雲】というウマは違う。
【飛行機雲】の言う『好き』とは、もっと単純で明快なもの。
「先輩、好きです」
「……おう?」
シルバアウトレイジの隣をキープしたまま、【飛行機雲】がそう告げると。
「ん〜……俺も好きだぜ!」
シルバアウトレイジは屈託のない笑顔でそう返すのだ。
「……先輩、」
「おう!」
「先輩、好きです」
「おう!」
「……はぁ。本当に鈍いですね」
「?」
【飛行機雲】の『好き』は、シルバアウトレイジには届かない。
たわいない話の一片として『好き』が消費されていく。
変わらない日常。
慣れたように食材を袋いっぱいに買ってきて。
風呂を浴びて泊まっていく。
「おやすみ」
「…おやすみなさい」
何とか言いくるめて置かせてもらった布団にくるまる。
…【飛行機雲】は、今日も眠れなかった。
・
・
・
「付き合うなら?…あ〜、【飛行機雲】?」
なんでって、俺がよく知ってるのアイツだけだしな。
どの歯磨き粉が好きとか、シャンプーとリンスはどのメーカーとか。
煮たり焼いたりとかだと食べられるけど生ではあまりだとか。
そういうの知ってるのアイツだけだし。
「うん、そういうワケ」
【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
たぶん同担拒否勢が多い。
でも本人はにぶにぶなので。
また広く浅くよりは狭く深くなコミュニケーション。
故に…?
「今日も元気か〜【飛行機雲】〜?」