さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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両想いで両重いな一族さんたち。



愛は深く

「…あ、今年から黒色になったの?袴」

「そりゃー毎年あそこまで茶色にしてたらねぇ」

「アッ()」

 

いくら一族の正装と言えども、正装と一族の気質がマッチしていないがための悲劇か。

【白の一族】と謳われる者たちの正装は昨年まで上から下まで真っ白であったが、流石に今年からは袴が黒になったらしい。

…まぁ、上は食べ物零したり喧嘩買わなけりゃ汚れない…はずだし。

僕は前作ったヤツでまだいけるけど変える人はすぐ変えるからなぁ。

んで、多分お抱えのクリーニングの人にも怒られたんだろう(というかそれが一番の理由な気がする)。

 

「僕も気をつけないと…」

 

 

「めっちゃ渋るじゃん」

 

普段ならどんな服装でも「はいはい可愛い可愛い」と褒める夫だが、この正装姿になった時だけは「俺は駄々をこねるぞ。それも一等のだ。大の大人がみっともなく泣き喚いてやるからな」と、キリッと言いやがるのがちょっと面白い。

 

「おら、行くぞ」

「…」

「離 せ」

「…どーせ行くんなら他の服でもいいだろ」

「これがウチの正装なんだよ!」

 

が、しかし。

何故こんなにも嫌がるんだか。

どうせ聞けば似合ってるって言うクセしてよォ。

 

「お前、私がこの正装で行くの嫌なのか?」

「嫌じゃない。むしろ着てほしい」

「じゃあなんで嫌がるんだよ」

「……それは……その……」

 

もごもごと口籠る夫に腹が立つ。

なんだコイツ、そんなに私の服装がキツいか?

なら素直にそう言え───。

 

「……他のヤツらにお前のその姿を見せたくないからだよ」

「…は、」

「お前のその綺麗な姿を、俺以外のヤツに見せたくない。……だから嫌なんだよ」

「……」

「……あ、ちょ、おい!」

「お前ってホント私のこと好きだよな」

「うっせ」

「……ま、私も大概だけどな」

「……えっ?」

「でも、服装はこのままだ」

「…クソがよ」

「ナハハ。ンな赤い顔で凄んでも威厳ねぇヨ」

 

一目惚れからずっと惚れ続け、日々違った姿を見せる愛しい人に『毎日が浮気だ』とすら思っているらしい夫。

 

「ほら、行くぞ」

「はぁ……仕方ねぇなぁ……」

 

そんな可愛い人の願いだ、少しばかりは…。

 

───────

─────

───

 

『ヒューヒュー』

『ラブラブだねぇ』

「うるせぇ、ウチの愛娘見るな散れ!」

「それ普通は父さんが言うことじゃない?」

 

姿を見せるだけ見せてサッと奥に引っ込んでしまった母と、ほんの少しでも身内とはいえ他人の目に世界一美しい妻が映るのが嫌な父。

 

「ま、まぁ……仲が良くていいじゃない。ねぇ、おじいちゃ───おおう」

「ウチの娘が一番美人なんだヨ!」

『なにおう!ウチの女房が一番だが!?!?』

「…う〜ん、普段通り」

 





【一族】:
白の一族。
ウチの伴侶・子ども・孫が一番なんだよ!
ひとたび集まればそんな大乱闘が常な人々。
血の気が多いし、愛も深い。
とはいえ服を汚すとお抱えのクリーニング屋さんからネチネチ文句をつけられる模様。
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