さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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えっ?



追い出された

『お父さん、今日は家に居ないで!!』

 

そう言って外に放り出されたのが半日前。

「え?僕なにか嫌われることしちゃった…?」と思いながら、果てには軽くべそをかきながらマブダチの家に向かうと、インターホン越しでは渋々だったけれど、べそをかく僕を見て「ハ?マジかよ…」と焦りながら部屋にあげてくれた。

 

「まぁ、とりあえず座れ」

「うん……」

 

そう言って僕を招き入れたマブダチは、そのままキッチンに飲み物を取りに行く。

僕は促されるままにソファに座りながら、その後ろ姿をじっと見つめていた。

 

(……優しさが身に染みる)

 

そんなことを思いながら見つめる背中がなんだかとても大きく見えて、思わず笑みがこぼれてしまう。

そんな僕の視線に気づいたのか、マブダチはこちらを振り返って言った。

 

「で?なにがあったんだよ」

「それが〜」

 

〜かくかくしかじか〜

 

「……へぇ、」

「そういうことで…うぅ」

 

 

喜と楽から滅多なことがなければ表情を変えないマブダチがべそをかきながら現れた。

その事実に顔に出た感情以上に焦り散らした俺は、とりあえず話を聞くことにした。

で、聞いたワケだ。

 

(あ〜…)

 

それで、察した。

コイツを家から放り出したのはコイツの娘で。

その娘と今日会うって朝っぱらから俺んトコのガキがソワソワして普段ではあまり気にしない身なりとかに気を使って。

挙げ句の果てには、待ち合わせの一時間前に家を出て、ソワソワしながら家に向かって、それで…。

 

「ドウチテ…」

「あ〜、泣くな泣くな」

 

たぶん。

俺んトコのとコイツの娘は脈アリってヤツなのだろう。

故に魔性のウマであるコイツがいたら取られる!って感じに家から追い出した、と。

 

「ゔぅ……」

「泣くなって」

(コイツのガキもまだ青いねぇ……)

 

ま、普段コイツは俺んトコのガキに良くしてくれてるし。

そんなヤツが落ち込んでるってんなら話は別だ。

だから俺は言った。

 

「まぁなんだ?とりあえず今日はウチで遊んでけよ?」

「……いいの?」

 

そう言って上目づかいでこちらの様子を窺うコイツに『こういうところだろうな』と考えながら。

 

「お前のご飯さえありゃイチコロよ」

「やっぱりそれかぁ」

 

 

私のお父さんはミリョクテキだ。

競走バの(サガ)なのか、一目見ただけで『強い』と分かる風格と体つきに、それを隠そうともしない堂々とした振る舞い。

そして何より顔がいい。

おばあちゃんやお姉ちゃん(我が家ではおばたちのことをそう呼ぶ)が絶世の美女であるからして、その血を持つお父さんもそうなるのは自明の理なのか。

…とはいえ。

 

(こういう時に家にいられるのは困るのよね…)

 

目の前にいるのは最近やっとこさ関係が進展した幼なじみ。

周りに聞くには幼い頃から相手は私にアプローチしていたようだけれど、私はそれに気づかなかった。

故に『お友だち』から先…という関係に変化するのにはかなりの時間を要したし、今でも気恥ずかしさがどことなく。

そんな幼なじみをお父さんに取られる…なんてことになるのは正直言って面白くない。

 

「えぇ、聞いているわ」

 

だって、───好きな人の視線は独り占め、したいでしょう?





僕:
シルバーバレット。
しょんぼり。
子の恋愛事情に関しては『あの子が決めた人なら…』となったのでだいぶ緩和した。
でも自分の魔性さに自覚がないため、これまでもそれとなく追い出されたりしていた。
でもハッキリ言われたのは今回が初めて。
ドウチテ…。
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