さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そこにいる。
います。



見守る

サンデースクラッパの部屋に、まるで同居人とでもいうように一緒にいるのが当たり前になって久しくなると、グローリーゴアは時折ある"影"を見るようになった。

 

【────♪】

 

その"影"はよく歌っている。

寝つきが悪く、寝ても数時間すれば目が覚めてしまうサンデースクラッパのために。

元はベッドの端に遠慮がちに座っていたのを、グローリーゴアが用意した椅子に座って、歌っている。

 

真っ暗な部屋の中で。

唯一の光源である月光が照らすから、『そこにいる』と分かる"影"。

まるで幼子を寝かしつける母のごとく、頭を撫でるその手つきはひどく慈愛に満ちていた。

 

【───…♪】

 

グローリーゴアはその"影"の正体を知っている。

けれど、それに言及するつもりはない。

その"影"は、サンデースクラッパのためだけに存在する。

だから、グローリーゴアが口を出すことではないのだ。

 

(……でも)

 

もし、サンデースクラッパがそれに気づいてしまったら?

自分のために歌う"誰か"を知ってしまったら?

 

(その時は……いったいどうなる?)

 

そんなことを考えるようになったのは、いつ頃からだったろうか。

ただ、ひとつだけ言えることがあるとすれば──……。

 

 

「この子を僕にください」

 

そうグローリーゴアが告げたのは覚悟を決めたある日。

外堀はもう埋めた。

あの子の家族は「あの子の『幸せ』がグローリーゴアと共にいることなら」と静かに、しかし確かに祝福をもって送り出してくれた。

あとは、この…()()だけ。

 

「この子を僕にください」

 

"影"は佇む。

一番の難関であり、最大の関門でもある"ヒト"は、いつもあの子にするようにグローリーゴアの頭を撫でた。

 

【 ────】

「あ、りがとう、ございます…ッありがとうございます!」

 

"影"は笑う。

それはまるで『がんばって』とでも言っているかのように見えた。

 

(……ああ)

 

これで、()()()()

あの子が笑っていられるように。

 

──……僕は僕の全部(すべて)を懸けて頑張るんだって。

 

 

世界のどこかしこに、もはや()()といってもいいぐらい存在している"影"はオリジナルの家族に対する『愛』を模倣するように、その子を見守っていた。

はじめは"義務"というプログラムからであったけれど、

 

【──────】

 

いつしか芽生えてしまったのだ。

【オリジナルも、もしかするとこんな気持ちを抱いたのかもしれない】と。

だから、"影"はその子を見守ることにしたのだ。

いつかオリジナルが持っていた『愛』とよく似たものを、自分が代わりに与えてあげれたら──……。

"影"はそんな風に考えていたのかもしれない。

 

【──────】

 

ゆえに今日も"影"は…。





"影":
いつかいた、誰かの影法師。
実は世界中に存在するらしく、"影"ごとに役割があるらしい。

今回の個体は『見守り』に特化しているもの。
はじめはただ付かず離れず見るだけだったが、徐々に子守歌を歌ったりなど自発的になっていく。
オリジナルに比べると真似事にしか過ぎない。
しかし…?
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