さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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人知れず、恐れる。



お前は、俺の

「先輩って、意外と過保護ッスよね」

「あ゛?」

「いや、なんつーか、その…」

「オメーが危なっかしいからだよ!」

「あだっ!」

 

「いてぇ…」と額を押さえる後輩に【金色旅程】はため息をつく。

誰が好き好んでもう一人でも大丈夫だろう年齢のヤツの面倒を見るというのか。

そこまで自分はお人好しではない…と舌打ちしつつも結局は面倒を見てしまう辺り、図星なのかもしれない。

 

「ったく、行くぞ」

「は、はいッ!」

 

後輩の元気な返事に【金色旅程】はもう一度ため息をつくのだった。

 

 

年々、危なっかしさが増している。

 

「先輩?」

 

不思議そうに首を傾げる眼に浮かぶ光は、はたしてその様なモノだったか。

かつての記憶を反芻するにも気付けばその光に呑まれてしまって。

 

「どうしたんです?」

 

強過ぎる光が、すべてを覆い隠すように。

いつしか、目の前の存在も呑み込まれてしまいそうで。

 

「なんでもねぇよ」

 

だから、その時が来たら。

その時は、自分が、この手で。

 

「先輩?」

 

そこでハッとした。

伸ばした手は今にもその細い頸に触れそうに。

何も気づかないままいつも通りの顔をする後輩のお気楽さが自分の思いと相対して嫌なコントラストを醸し出すのを、【金色旅程】はただ黙って見ていることしか出来なかった。

 

「先輩」

「あ?」

「最近、考えごと多くないですか?」

「……気のせいだろ」

 

後輩の指摘に内心ギクリとしながらも平静を装って答える。

しかし、そんな誤魔化しが通じる相手ではなかったようだ。

 

「嘘だぁ!だって、ここ最近ずっと何か悩んでるじゃないですか!」

「……」

 

このやり取りも何回目か。

「聞くな」と態度で示せば、なぁなぁに呑み込んでくれる相手とはいえ、流石に何度も同じやり取りをしていれば相手も不満に思うもの。

 

「むぅ……」

 

後輩は頬を膨らませて「先輩の横暴(おーぼー)」と拗ねている。

しかし、そんな表情も長く続かないのが後輩の面白いところであり、また悪いところでもあった。

 

「まぁ、別に良いんですけどね」

「良いのかよ」

 

思わずツッコミを入れた【金色旅程】だが、後輩は気にすることもなく毎度と同じ話の流れを作る。

「今日のご飯は何がいい」だとか、「次はどこに遊びに行きましょうか」だとか。

「先輩は、何がしたいですか?」だとか。

他愛もない話を繰り返す後輩に、【金色旅程】はただ黙って耳を傾ける。

その口から紡がれる話題の一つ一つを丁寧に聞きながら、ふとした時に思うのだ。

 

(…たまには、お前のやりたいことでいいのにな)





【金色旅程】:
先輩。
変わってしまったような、変わっていないような、そんな後輩を気にかけている。
何となく危機感的なモノが強そうな人っぽい。
なので何だかんだ言いつつもしっかり引き止めてくれそう。
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