さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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同病であるが故、同族嫌悪。



同病相厭う

初対面の時から、もう『あっ』と思っていた。

それほどまでに僕らは──()()だった。

 

 

「気持ち悪いな」

「あ゛?」

 

瞬間、飛んできたマッハパンチを何とか手で受け止めれば「ヂッ」と濁音がついた舌打ちをされ。

「オラ、さっさとジャケット脱げよ」と殴り合い(けっとう)の合図が出される。

ジュニア期になる前から、どうにもウマが合わない僕らはこうして秘密裏に、誰も来ない場所で殴り合い(けっとう)をすることが多々あった。

みんなの望むバレットシンボリと、シルバープレアーの皮をかなぐり捨て、ただ『気に食わないから(地雷を踏んだ)』の一点で殴り合う。

まぁ、走ることを主題としているアスリートだから蹴りや脚への攻撃は無しで、自分たちにはアイドル的な側面もあるから顔に対しての攻撃もまた無しで。

殴り合い(けっとう)と言っても、精々がボディーに拳をぶち込むだけだ。

…時々、勢い余って首絞める時もあるが。

 

「オラ、行くぞ」

「来いよ」

 

程々のサイズの石を握った拳が、お互いの体に突き刺さる。

一発目はお互いにガードで防ぐと、すかさず二発目を放つ。

 

「おらッ!」

「シッ!」

 

慣れたものだ。

避けるのも、殴るのも。

嫌なことに、初対面の時からトレースみたく互いの思っていることや考えていること、次に話すだろうことが分かる僕らは、互いの攻撃の癖を知り尽くしている。

だから殴り合う時、僕らは相手の行動を先読みし、その上で自分の行動を決める。

 

「オラッ!」

「ぐッ」

 

二発目のボディーブローを食らった僕は、お返しとばかりに(こぶし)を繰り出すが──。

 

「甘いんだよッ!!」

 

その拳を掴まれると同時に、そのまま綺麗な一本背負いで視界が回る。

地面とのキスは嫌で何とか足を踏ん張ったところで…今回の殴り合い(けっとう)は終わりらしい。

ふたり、服に少し土埃がついたくらいで怪我らしい怪我もなく、ただ『気に食わない(地雷を踏んだ)』という一点のみで始まった殴り合い(けっとう)は終わる。

 

「あー……クソッ! 負けた!」

「ハッ! 俺に勝とうなんざ百年早いんだよ」

 

「うるせぇよ」と悪態をつきながら、僕は立ち上がる。

そして服についた土埃を払うと、バレットシンボリが口を開く。

 

「……なぁ」

「……なんだよ?」

「お前さ……なんで走ってるの?」

 

…………?

それは──、

 

「テメェが一番よく分かってんだろ、皇帝の息子サン」

「お??もっかいやるか?」

「…そりゃあ勘弁つかまつる。ってか、いてて…このバカ(ぢから)めが」





同期であり、どこか境遇が似ているシルバープレアーとバレットシンボリのふたり。
だがその『似ている』は他人が思っている以上であり、思考や行動や言動もある程度トレース出来るぐらいには二人とも『同族…(ウゲッ)』としている。
ので、結構な頻度で互いの地雷を踏みあっては殴り合い(けっとう)をする日々。
たぶんこの二人、揃って普段は優等生で穏やかなので殴り合い(けっとう)の光景を誰かが見たら…?

年相応に口悪いし喧嘩もする。
しかしそのことを知っているのは『同族』であるお互いだけ…みたいな。
『同族』だからこそ見ることを許される内側。
そのため他の人がその内側を見ることを望んでも…。
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