さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ヒトが好きなあなたと。



何も分かってない!!

「お前も子どもっぽいとこあるよなぁ」

 

そう言って、ただ笑うばかりの先輩に頬を膨らます。

まったく…この人は何で分からないんだろう?

先輩-シルバアウトレイジは現役を引退した今とあっても人気のウマだ。

それに生来の人好きのようで誰かを見かければ駆け寄っていってファンサぐらいなら普通にする。

そしてそのファンサの際に生まれながらの美形フェイスで微笑んだりするものだから、その破壊力たるや凄まじい。

特にファンでなくとも、タイムラインにそのような画像が流れてきた。

それだけでコロッと落とされてしまう者も多いと聞く。

そんな先輩だから……、

 

「僕以外の人と仲良くしないで下さい」

「……は?」

 

先輩は僕の言葉を聞き逃したようで聞き返してくる。

僕はそれにもう一度言ってあげることにした。

 

「ですから!僕以外の人と仲良くしないで欲しいんです!」

「お、おう……?」

 

困惑気味の先輩だったが、それでも頷いてくれたので僕は満足して頷く。

よしっ!これで…と思ったのが甘かった。

そうだ、そうだった。

先輩は何度言ったって分からないし、あの人好きは生来なのだ。

ウマ相手には大概必要最低限以外は素っ気ないクセして、ヒト相手には無駄に愛想よく振る舞う。

 

「先輩って、何かこう……距離感近いですよね」

「そうか?まぁ、ヒト好きだしなぁ……」

「そうなんですよ!だから僕以外の人にも優しくしちゃうんです!」

「……いや、それは違うだろ」

 

僕の発言に先輩が呆れ気味に言うが僕は構わず続ける。

 

「優しいのは良いことです!でも……でもですよ!?先輩は誰にでも優しすぎるんですよ!」

 

そんな僕に先輩はため息を吐くとこう言った。

 

「……お前さぁ、」

 

それからも何かしらをくどくどと言っていたはずだが、僕の耳には何も入らず。

逆にどれだけ頑張って僕が先輩の横をずっとキープし続けているのかを今にも語ってやりたいぐらいには僕の想いは強い。

 

「【飛行機雲】、」

「……はい」

 

先輩がまた呆れたように僕を呼ぶので僕は首を傾げる。

 

「俺のこと好きすぎないか?」

「……え?いや!そそそそんなことはっ!」

 

いや、あるけども!

あるけれども……それを本人に言われるのは流石に恥ずかしいというか……!

あたふたとする僕を他所に先輩は言葉を続ける。

 

「だってそうだろ?いくら何でも俺がファンと話してるだけでそう言ってくるとか……」

 

言いながら先輩の指が照れている時の動きをする。

僕だけしか知らない、先輩の癖。

先輩自身も知らない、先輩の癖。

 

「そ、それは……先輩が僕だけの先輩じゃないからです」

 

僕がそう言うと先輩は首を傾げる。

 

「……?俺はお前のものじゃないぞ?」

「いや、あの……そういう意味じゃなくてですね……」

 

僕は思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ。

そうだ、この人はこういう人だった……。

僕の言いたいことは全然伝わっていないし、それに何よりこの人にはそういう自覚がまるでない!

 

「はぁ……」

 

もう何度目になるか分からないため息を吐くと、先輩の手が伸びてきてそのまま頭を撫でてくる。

 

「いい子いい子、【飛行機雲】はいい子」





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
生来よりヒトが好き。
でもウマはあんまし。
多分家族以外で仲いいウマは【飛行機雲】ぐらい。
某キュウカンバーさんとも交友はあるけどあくまで先輩後輩感。
この、約束されたニブチン…。

【飛行機雲】:
めんどくせ〜後輩。
ヒトに対してバチくそファンサしては落としまくる【銀色の激情】にズモモモ…とする日々。
ウマの中では自分が一番仲良いとは知っているがそれはそれ、これはこれ。
でも【飛行機雲】だけしか知らない【銀色の激情】のあれやこれやがそこそこあったりする。
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