仲良し仲良し。
シルバアウトレイジから見て、シルバーバレットというウマは、一族にとって正真正銘の『信奉対象』であった。
必然なまでの強さ。
それは時に人を神にまで押し上げるとでもいうように、シルバーバレットはひっそりとレースの世界に居続けていた。
本人は『何かあった時のご意見番』だと宣うが、ひとたびこのウマが何か言えばそれまでのすべてがガラッと様変わりするだろうことは想像に難くない。
「まぁ、隠居の身だからね」
あの日々のレース観戦も趣味と実益を兼ねているところがあるという。
子々孫々の活躍を見るのも然ることながら、観客側でレースその他一連を見て回るのも
「ところで、俺を呼び出したのは?」
「あぁ、…家族サービス?」
「家族サービスぅ?」
「若い子とも多少は交流持っとかないと。それに、キミ以外の子はみんな何だか遠慮するからねぇ。僕としてはもっと気楽にしてもらっていいのに」
「ま、まぁ……それは確かに」
上下関係。
特にこのウマが関わるとその傾向が顕著になる。
目の前のこの老ウマは今もなお超えられないレジェンド、自分の遥か上にいる存在なのだ。
気安く接しろと言われても大概の人間には難しい話である。
だが、当のシルバーバレットはそれをあまり好ましく思っていないらしい。
「みんなもう少し肩の力を抜くべきだよねぇ? 僕はもう引退した身なのに」
「引退って言ってもまだピンピンしてるクセに?」
「ピンピンしてるけど、もう走る気は無いよ?」
「……じゃあなんで『週末に、寮の門限ギリギリまで走ってるとシルバーバレットと会える。そして勝負できる』なんて話が出てんだよ」
「……さぁ? 」
「はぁ……」
飄々とした物言いは昔から変わらない。
よくよく見なければシワがあるのかどうかも分からない、長年変わらない容貌は、今もなお多くのファンを量産し続けている。
「キミもさ」
「はい?」
「そろそろ引退して自由に過ごしたら? ほら、今はもう立派になった教え子たちがいるじゃない?」
「……それは俺がもう現役でやれないって言ってるのか?」
「いや、そこまでは。でも、キミはまだまだ若いんだからさ。僕のように老い先短いウマと違って、未来があるよねぇ。ある程度で見切りをつけないとやりたいこともできなくなるから」
シルバーバレットの物言いはどこか他人行儀だ。
いや、実際他人事だろう。
初老の折に現役を引退し、そのままずっと後進の育成に邁進してきた身とあっては…。
「じゃ、ご飯食べに行こっか!」
「…へいへい」
僕:
シルバーバレット。
本人的には若い子と仲良くしたいがめちゃくちゃ丁重に接されてはしょんぼりする日々。
いちおうレースの世界とは年老いた今でも繋がりがある。
案外抑止力として見られているかも…?(本人にその気はないけど)