さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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いつかの、あの子。



酷似

ひょんなことからミスターのご実家にお邪魔することとなった。

はじめは遠慮したのだけれど、「アタシが友だち連れて帰るって連絡したら大騒ぎってくらいに大喜びしてたから…ダメ?」とウルウル目でお願いされてしまい、仕方なく仕方なく。

ご機嫌ルンルンなミスターに手を引かれながら、僕は彼女の実家へとお邪魔した。

 

「ただいまー!」

「お、おじゃまします……」

 

玄関を潜ると、ミスターのご両親が出迎えてくれた。

 

「あらあらまぁまぁ!いらっしゃい!」

「よく来たね。ゆっくりしていって」

 

ニコニコと歓迎してくれるご夫妻に挨拶をし、僕たちはリビングへ通された。

 

「ほら座って座って!これお茶菓子だから食べてちょうだいね」

「あ……ありがとうございます」

 

御母堂が淹れてくれたお茶に舌鼓を打ちつつ、あれやこれやと学園でのミスターの様子を聞かれては答える。

なにせミスター、電話しても「普通だよ〜」とか「元気元気」とか話すだけで、なかなか学園でのことを教えてくれないのだそう。

 

「あの子ったら……本当にもう」

「いいじゃないか。元気そうでなによりだよ」

 

ミスターのご家族はみないい人ばかりだ。

 

 

……それはそれとして。

 

「なんかあった?」

「いや…」

 

お風呂にミスターと共に入り、一緒の部屋でふたつ布団をひいて眠ることになって、ふと考える。

 

───何故、ミスターの御母堂は僕を見て、あんなに驚いた顔をしたのだろう?

 

ミスターとよく似て美人さんの御母堂であるからして、あんな美人見たら記憶に残ってるだろうに。

何度記憶を漁ってもそれに該当する人物は出てこない。

 

「……ま、いっか」

「ん?どうしたの?」

「なんでもないよ。おやすみ」

「うん!おやすみ!」

 

 

娘がはじめて連れてきた友だちは、今もなお心の中に爪を立てて巣食う"あの娘"に似ていた。

独学なのに、それで本気でやっている私たちを軽々と退ける天賦の才を持っていて。

勝ち負けとかどうでもよくて、ただ走りたかっただけだからと、最後は去っていった"あの娘"。

 

はじめは、『すごい』と思っていた。

けれど段々、妬ましくなった。

何度やっても伸びない自分の記録とは裏腹に、"あの娘"は数回走っただけで、あっさりと私たちを追い越していった。

 

『ねぇ!あなたすごいのね!』

 

だから声をかけた。

でも"あの娘"は私を一瞥すると、興味なさげにまた走り出す。

悔しかった。妬ましかった。

そんな気持ちを抱えたまま、私はレースの世界に足を踏み入れたのだ。

"あの娘"が今どんな気持ちで走っているのかは知らないけど、私はただ走りたいから走ることにしたんだと割り切って走り続けた。

そして今日───あのシルバーバレットと名乗る子と出会って…。

 





僕:
シルバーバレット。
……はてな?
どことなく雰囲気が母に似ている。
それはそれとして、母の『父と出会うまで以前』のことはそこまで聞いたことがないためよく知らない模様。
住んでた地域一帯をシメるガキ大将だった…ってくらいしか知らない。
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