でも、キミのためだよ?
どことなく、自分の日常が『変だ』と気づいた。
そこそこ難癖をつけられることに慣れ親しんでいたのだけど、ふと考えてみると自分にそう言った人が、いつの間にやら学園から消えている。
聞けば一身上の都合で退職したとか中退したとか。
はじめは『へ〜』と思うだけであったけれど、それが何度も続けば流石の僕も『あれ?』とは思うわけで。
「どういうことかな?ルドルフ会長」
「さて、何のことでしょう」
少々、直談判しに行ってみた。
トレセン学園生徒会長であるシンボリルドルフは、学園内での地位もさることながら、"シンボリ家"という強力なバックを持っている。
たしかに容疑者はルドルフ以外にもいたけれど、こう簡単に他人を排除できる立ち位置となると…、と僕はじろじろ彼女を見ながら思う。
しかしシンボリルドルフは涼しげな顔でこう言った。
「彼ら彼女らは他生徒や他教師からも苦情が出ていたんだ」
「へぇ、」
しかし、僕は知っている。
彼ら彼女らはそう言われるほど悪い人じゃなかったって。
周りの『辞めちゃったの?』って反応を見るに、多分『いつの間にかいなくなっていた』っぽいので、不可解だと思う人もいるんだろうな。
ルドルフの弱みを握ったぞ、とは言いたくないんだけどなぁと少し考え込んでると……。
「気になるかい?」
「……」
うわ。
見透かされてるな、これ。
僅かにヒクッとなった目じりを見たのか、面白そうな顔を浮かべてこちらを見てくる。
ちょっと意地が悪く感じたので、「いいや」と返したのだけど、そんな言葉聞いてないと言わんばかりに朗々と語りが始まった。
「キミは、"サラ系"だね?」
「…ま、いちおうは」
「見目も体も普通のウマ娘と変わりがないがしかし、古くからの常識で何かと言われたことが」
「そりゃあ…あるには、あるけど」
歴史の授業でも"サラ系"については学ぶが、自分がそうだと公にしている者は少ない。
それは過去にあった謂れのないあれやこれやで自身の出自を秘するようになったが故とされる。
…とはいえ、
「…まさか」
至った結論に、思わず漏らせばにこりと無言の肯定が返ってくる。
「
「
はぁ、と呆れたため息。
いや、そんな顔されても…!
「キミは、
「は、?」
「キミは、自分自身が愛されていることに気づいていないんだ」
「なにを…う゛っ!?」
ぐん、と胸元を掴まれて引き寄せられる。
そして眼前に広がるのは、ギラギラとした彼女の瞳。
その目のあまりの恐ろしさに思わず背筋がぞくりとしてしまう。
「理事長から私がキミに頼られていると言われた時、どれだけ嬉しかったか。キミがちゃんと幸せだと気づいた時の歓喜。すべて、すべて…」
「や、やめ、て……く」
「以前まではよかったが…。しかしもう無理だ。キミは、気づいてしまったから」
ちっとも可哀想と思っていない顔だ。
逆にいい塩梅になったとでも言うような。
「私も、もちろんシービーやエース、シリウスだってキミを守るさ。…安心したまえ」
…あぁ、ちょっと。
(やばいかも、しんない)
僕:
シルバーバレット。
愛されている。故に。
何を言われようがオリハルコンメンタルなので気にしない。
でもアイデアが高かったから…?