さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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食べたい食べられたいとは思うけど、でもずっと一緒にいたい気持ち。
だって、ね?



極上の味?

身も心も求めたのなら大切にして。

喰い尽くすのなら、ひと欠片も残さないで。

全部全部捧げたのに残されるなんて、そんな屈辱的なことないだろう?

 

「美味しい?」

 

喰わせることはひとつの『愛』だ。

食べることもまたひとつの『愛』だ。

どちらも、相手のことを想いながら行うものだ。

 

「美味しい?」

「うん」

「そう」

 

咀嚼し、呑み込まれていく。

そして、いつしか呑み込まれたソレは目の前のキミの体を構成する一部となる。

 

「もっとある?」

「あるよ。どれぐらい?」

「さっきと同じくらい」

 

僕が作ったものを、キミが食す。

僕が作ったものを、僕も食す。

そう考えると僕らの体の構成は、お互い同じということになるのだろうか。

 

「そんなに食べると太っちゃいそうだけど」

「太らないよ」

 

僕はキミが食べているのを見るだけで正直お腹がいっぱいだ。

でも、僕の作ったものを美味しそうに食べるキミを見ていると僕もまた食べたくなってしまうんだ。

だから、もっと作って食べさせてあげようと思うんだよ。

 

「美味しい?」

「うん」

 

 

どことなく。

美味しいものを作ることができるキミ自身も、…美味しいのではないかと思う時がある。

 

「グローリー?」

 

そう言って笑う時、「ちょっとだけね」と味見させてくれる時、「美味しい?」と聞く時。

キミはいつだって『美味しそう』なんだ。

だから、僕はその味をもっと知りたくて、もっともっと食べたくなる。

そしてその代替に…。

 

「…」

 

切って、刺して、食べる。

それの繰り返し。

誤魔化すように、または満たすように。

日々、目の前のキミは美味しそうになっていく。

 

「グローリー」

 

キミは僕に食べさせる時、いつも笑っている。

美味しい?と聞く時も、味見をお願いする時も、僕が食べる時にも。

だから僕はキミに食べているところを見られるのに慣れた。

でも……。

 

「ねぇ、グローリー」

 

キミはいつも笑うから。

愛おしそうに、笑うから。

その笑顔を見ていると、時々思ってしまうんだ。

………………食べたいな、って。

 

 

キミと一緒になれるなら、そんな幸せはないと思うけど。

でもそれはただの一過性に過ぎなくて。

呑み込まれても、いつしかきっと僕の存在はキミの中で消えてしまう。

 

「…」

「スー?」

「なんでもないよ」

 

食べたいぐらいに好きならぬ、食べられたいぐらいに好きだという己の感情はどうにもこうにも度し難い。

もっともっとと望むのも、その他の何もかも。

 

「ねぇ、」

 

言いたいことをごくんと呑み込んで。

 

「今日のご飯、美味しかった?」





全部食べられちゃったら。
───目移りしちゃうかも、しれないから。
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