さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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いや決して忘れていたとかではなく…(あらぬところを見る)。



*安心

「ホントに、デカい犬だなお前は」

 

そうボソリと告げると「嫌い?」と不安げな声が返ってくるので首を横に振って否定の意を示す。

 

「いや、嫌いじゃないよ。可愛いと思う」

「そう? 良かったぁ……」

 

ホッと胸を撫で下ろすように安堵する姿に苦笑しつつ、改めて相手-シルバマスタピースを見る。

美しい栗毛によく似合う蒼い目。

いや、蒼というよりかは少しばかり緑が混じった色だが、寒色系という括りでは同じなのだから良しとしよう。

身長は自分よりもずっと大きく。

だが、大きいその体がいま現在は自分に巻き付くようになっているから、まるで大福でいうなら中の餡子のような心地である。

暖かいのは、暖かい。

しかし、いつまでもこの状態を続けていられるわけもない。

 

「なぁ」

「ん?」

「そろそろ離してくれないか? もう起きたいんだけど……」

「……やだ」

「やだってお前……」

 

困ったなと頭を搔く。

いや、別に困るほどのことでもないのだが……なんというか、こう……。

 

「なんか落ち着かないんだよ」

「……なんで?」

 

不思議そうに首を傾げる親友に、どう答えたものかと悩むが……。

数秒考えた後、正直に言うことにした。

 

「なんか、お前にそうされると母さんのこと思い出すから」

「」

「いやでも昔のことだぜ?ちっちゃい頃にこうやって抱っこされてたな〜って思っただけだし」

「……」

「いや、うん。別に嫌な思い出ってわけじゃないぞ? ただこう……なんつーかさ」

「僕がリリィさんに似てるってコト?」

「へ…?まぁ、体格とかは…?」

 

そう言われて我が母のことを考える。

彼女は子である自分たちをとても大切にしていた。

とはいえ万年ラブラブの父に向けるものと比べると烏滸がましいが、立つこともまだままならなかった時代に事ある毎に可愛い可愛いと猫可愛がりしてはまだ幼い自分たちに触れてこようとする祖父や父といった男衆に威嚇していたのをよく覚えている。

そして、その度に母は言うのだ。

『だって可愛いんだもの』と。

 

「似て…るか?」

「……」

「いや、でも……まぁ、似てるか?母さんもお前-マス太のこと可愛がってたし」

「…ふぅん」

 

胸元に耳を寄せるとトクトク聞こえる鼓動の音。

それに安堵してしまうのは生物としてのサガだろうか。

 

「……」

 

……。

……いや、やっぱ恥ずいわ! なんでコイツにこんな安心感覚えにゃならんのだ!

 

「……離せ」

「やだ」

「お前な!」

「だって寒いし」

「なら暖房つけろっての!」

 

いや、ホントになんなんだこいつは!?

そんな思いを込めて睨んでやればマス太はキョトンとした顔をこちらに向けてから小さく笑った。

そしてそのままギュッと強く抱き締めてくる。

その腕の力強さと温もりが心地よいと思う自分に腹が立つ。

 

「はぁ〜…」





僕:
シルバーバレット。
親友であるマス太と一緒。
自分よりも大きな人に安心するっぽい。
そしてその好みはきょうだい共通だとか。

マス太:
シルバマスタピース。
お久しぶりの登場。
今日も今日とて僕と一緒。
どことなく僕から誰かしらに重ねられていることには気がついていたがまさか僕の母である【白百合】さんにだとは思ってもみなかった。
でもそれを笑顔で利用するのがマス太クオリティ。
はっきりわかんだね。
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