さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

631 / 1416

ひどく、嬉しそうな。



あの人に向ける顔

「…アレ、誰?」

「んぁ?あぁ、同室の先輩」

「…ふぅん」

 

パサーこと、エルコンドルパサーと本日もニコイチと見紛うような距離感で過ごす。

がしかし、先程パサーがいない間に同室の先輩と話していたのがどうにも気に食わなかったようで抱き締める力がどんどん強くなっていっているのに、パサーは気にする素振りもない。

 

「なぁ」

「ん?」

「何がそんなに不満なんだよ」

「…別に」

「ぁ?おい!?」

 

抱き締める力が緩んだと思ったら、今度は痛いぐらいに手を握られてどこかへ引っ張られていく。

引き留めようとする俺と有無を言わさずズンズン引っ張るパサーとでは歩幅が違いすぎて、半ば引きずられるようになってしまう。

 

「おい!なぁって!」

「……」

「パサー?」

「……なに」

「どこ行くんだよ」

「……」

 

今度は急に立ち止まったと思えば、また黙りこくってしまった。

本当になんなんだ?と疑問に思っていると、パサーは空いている方の手で俺の頬に手を添えて顔を近づけてくる。

そのまま唇が触れ合いそうな距離まで詰められてしまい、思わずギュッと目を瞑ると……ガリっ!

 

「!?」

「…ん、いい感じ」

 

突然頬に走った痛みに目を見開くと、指の腹でその痛みの元をなぞるパサー。

 

「な、なに……」

「別に」

「はぁ!?」

 

それだけ言うとまた手を引かれて歩き出す。

今度は先程と違って少しゆっくりめで、前を行くパサーの表情は見えないがなんとなく機嫌は良さそうだ。

痛みの原因も分からずに引っ張られるまま歩いていると、どうやら目的地に着いたらしく歩みを止めた。

そこは自販機の前だった。

 

「おごるよ」

「……え?」

「どれがいい?買うから」

 

にこりと笑うパサーはどこか…嘘っぽい。

白々しいというか、なんというか……。

 

「じゃあ、コレ」

「ん」

 

パサーは自販機に小銭を入れていくと迷うことなくボタンを押した。

ガシャンと音を立てて落ちてきたのは水。

 

「はい」

「……ありがとう?」

 

差し出されたペットボトルを受け取ろうとするとヒョイっと避けられてしまった。

思わずムッとした表情になってしまうが、それすらも見越したように笑っているパサー。

 

「開けてあげる」

「は?」

 

そう言うと蓋を開けてもう一度差し出してきたので、有難く受け取るとまたにこりと。

 

「…どうしたんだよ、お前」

「……チャンプが気にすることじゃないよ」

「変なやつ」

「ずっと変だよ。…キミのせいで」

「責任転嫁するな」

「はは」

 

なぞられる頬が痛い。

だがそんな俺の顔をコイツは────。





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ(ウマ娘実装軸)。
同室にモブの先輩()がいる。
その先輩のことをとても慕っており、育成ストではたびたびその先輩が登場するとか。
それはそれとしてウマソウルがあるっぽい…?【怪鳥】にそこそこの頻度で絡まれ()ては振り回されているらしい。
でも何でそうなってるか分かっていない鈍感。
またの名を通常運転。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。