さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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もう二度と会わないことを祈るよ。



匣が開いては、

【白の一族】に列なる者は…いかんせん、よく捕まる。

そのため幼き日からピッキング等の鍵開け技能は叩き込まれるし、中には「ふぇぇん、お家帰りたいよう」という見る人が見れば「うわっ…」というだろう泣き落としテクも習得する。が、

 

「はて…、」

 

どう足掻いたって抜け出せないなコリャ…となることも万一、いや億一かもしれない可能性だが…ある。

窓は嵌め殺しで部屋に備え付けの椅子で割ろうと踊りかかろうが傷一つなく。

ドアもハイテクなそういうので部屋の中からは開かないし。

ちゃんと風呂とトイレがあるのは高得点ではあるが、窓がないので外の様子が一切わからない。

 

「へいへい、いい子にしてましたよ〜」

 

しかも衣食住の衣と住が保証されようにも食を握られてしまっている。

毎日決まった時間に食事が運ばれてくるので、こんな部屋でも何とか正気を保っているところもなきにしもあらず。

 

「お腹空いたな……」

 

故に、そんな生活の中での唯一の楽しみが食事だった。

毎日運ばれてくる料理は、とても美味しい。

それこそ今まで食べたことがないくらいに美味しいのだ。

とはいえ、

 

「自分で食べさせてくれよ…」

 

差し出される匙にフォーク。

しかし、自分で食べたくとも己が手首にはぐるりと手錠。

仕方なしにハム、と食むも味気ないったらない。

 

「こんなことしても逃げないよ〜」

 

 

はじめは、抵抗されるかと思ったが数日で標的は大人しくなった。

逃げられないように色々と誂えた甲斐があったとは我ながら自画自賛するが、それでも目を離すと仕掛けた隠し監視カメラが壊されているのには肝が冷える。

 

「どうしたの?焦った顔して」

 

相変わらず腹の中が読めない顔でケラケラと笑う顔。

このウマなら偶然でも有り得るし、偶然を装った確信犯でも有り得る。

 

「いや、別に」

「そう?」

 

にこにこと笑みを絶やさないウマは今日も今日とて頑丈な手錠を嵌められている。

 

「あのさぁ……」

「うん?」

「逃げないの?いや、逃がすつもりもないけど」

「逃げてもいいけど、ならキミをどうにかしなくちゃね」

「……まぁ、ね」

 

少しずつ少しずつ。

閉じ込めたあの子は、自分に心を開いてくれた。

娯楽に耽ったり、たまには仕事の愚痴を聞いてもらったり、他愛もない話をする。

してた、のに。

 

───ごんっ!

 

笑っている。

 

「ごめんね」

「ぅ゛、」

「家の人から油断してるところ狙えって教えられてるからさ。…あ〜、キミの相手、結構大変だったなぁ」

 

じゃあね、と手を振る姿。

待っての声は────。





相手結構大変だったと言いつつも、何だかんだあの生活を楽しんでいたところがタチ悪いよね。
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