愛されてた人たち。
そのやさしい眼差しは、娘や自分から、というよりかは…遠き昔に儚くなった妻から受け継いだものだろう。
何の濁りもない、陰りもない、美しい目。
光の一縷も入らないソレは、見る人によっては恐れるものであろう。
しかし自分たちにとって、その眼差しは何よりも尊く、そして愛おしいものであった。
「おじいちゃん」
その眼差しを持つ孫は非常に華奢だ。
又聞きの話にはなるが、自分たちの家系の始まりである"かの方"もこの子と似たように華奢だったと聞く。
その血を、色濃く継いだ子。
「おいで」
自分たちの家系は、何かしらに率いで、何かしらに欠ける。
あちらが立てばこちらが立たずか、それともその逆か。
それは分からない。
けれど、この子だけは違うと信じていた。
「おじいちゃん」
この子は、きっと誰よりも強い子だと。
だから自分たちは、この子がどんな道を歩もうとも……それを見守り続ける覚悟でいた。
"あの日"までは。
「おじいちゃん」
いつからだろう。
その目に陰りが見え始めたのは。
いや、最初からあったのかもしれない。
ただ、それに気付かなかっただけで。
(……)
孫の細い体に傷がついた。
大きく目立ち、そして刻まれた。
孫の皮膚の色を易々と変えたその火傷跡は、あの美しかった目も焼いてしまったようで。
「おじいちゃん」
孫の声を、自分はいつから聞いていなかっただろうか。
「おじいちゃん」
ああ、この子が自分をそう呼ぶのは何年ぶりだろう。
この子はいつ頃から……自分たちを呼ばなくなったのだろう。
「おじいちゃん」
"あの日"からだ。
そう思い至ると、背中に氷水をぶち当てられた心地になる。
よもや、今の今まで忘れていたのか…と。
"あの日"、あの子は藻屑となった。
どれほど苦しかったろう。
どれほど無念だったろう。
「もうすぐ帰るね」。
それがあの子の最後の言葉だった。
悪運の強い子だった。
強い子だと…思っていた。
思っていた、だけだった。
「クソっ」
どうにも、神様とやらは自分たちのことがお嫌いらしい。
妻のことを連れ去っては、果てに孫であるあの子まで。
そりゃあ、あのふたりが何よりもキラキラと輝いている『幸い』であったのは確かだけれど、何も…奪わなくてもいいじゃないか。
「身勝手なクソ野郎が…」
どれだけその手を強く握っていても。
嗚呼神様、アンタってヤツは。
するりと自分たちの手から、自分たちの『幸い』を奪っていくの。
「大っ嫌いだ」
抱き締めてやろうにも、もうできない瞼の裏の影。
ただ己を呼ぶ声だけが潮騒のように遠くからした。
人間側は「美しいから奪われたんだ」と思ってるけど、神様側からしたら「コイツ世界のバグ!」って感じなんだよなぁ。
「コイツがいたら世界がしっちゃかめっちゃかになる!」っていう。
多分その本音を知ったら怒り狂うんでしょうね(すっとぼけ)。