普段は寒がりな銀弾。
寒いのは、あまり得意ではない。
いや、ヘビみたく変温動物になったつもりは毛ほどもないが、それでも幼い日よりどちらかというと寒さに弱いのは確かだった。
「…」
走っている時は、まだいい。
走るとエネルギー代謝がどうこうとかで、寒さはあまり感じない。
が、こうして止まると、やはり寒い。
「……」
思わず自分の両肩を抱くようにして、そのまま二の腕を擦る。
そうしてから、ふと気付いた。
「……そっか」
そりゃあ寒い。
走って走って熱くなるにつれ、どうやらジャンパーの前だとかを開けていたようだ。
…寒い。
「……」
そんな単純なことに気付かないとは、我ながらどうかしていると思うけれど……まあそんな日もあるだろう。
もしくは、…寒さで脳も動きが鈍っているのか。
(明日は、あたたかければいいのだけど)
*
己が家が、一般的な家庭よりも寒さに敏感だと気がついたのは、さていつだったか。
若い時分の僕らは『それはまだなんじゃないか?』と内心思っていたコタツや暖房や掛け布団諸々はあの人-父にとっては生命線のようなものであったらしく。
「さみゅい」
そう言ってピルピル震えるのだから、よく下のきょうだいたちが駆け寄ってはぎゅうぎゅうと寒さに震える華奢な体を抱き締めてあたためていた。
「ほら、だから言ったじゃないですか」
僕は呆れながら、けれどどこか微笑ましく思いながらも、父に布団を被せてやる。
そうしてから、また台所へと戻っていった。
あの人は、僕ら家族の中でも一番寒がりで。
そんなあの人をあたためる役目は子ども体温組といつしか決まっていたし、それはきっとこれからもずっと続くのだろうと思っているが。
(昔は、それも僕の役目だったのに)
どれほど防寒対策をしても、効き目があるまで「寒い寒い」と震えるのが昔からで。
そうなると率先して抱きしめるのが彼にはじめて引き取られた子である己-シロガネハイセイコの役目であった。
それをすると父はいつも「あったかいねぇ」と嬉しそうに微笑み。
「はは、」
…かつて。
あの人を、父を、あたためていたのは。
「僕だけ、だったのに」
*
子どもというのは須らく体温が高く、またスキンシップが好きだ。
いま時分もっと着込めばあたたかくなるだろうことは承知の上ではあるが、いかんせん昔から我が子たちに抱き締められあたためられた体は、贅沢なことにそのあたたかさの虜となったらしい。
「くちゅん」
出したくしゃみは年不相応の可憐さで。
一緒に出た鼻水をツピ、とすすれば何処からともなく幼子たちが駆け寄ってきて。
(…ぬく〜い)
僕:
シルバーバレット。
レース時は意識切り替えてるので特段そうは思わないけど、普段は結構寒がりなウマ。
日課のランニング以外はすべて防寒着でモコモコしてそう。
さむい…(ピルピルピル)。