理解など出来るわけ無き。
…それは、本当に?
はじめ、『ソレ』はウマではないのだと思った。
『へぇ〜、お前中々やるなァ!』
子どもだった。
子どもの、ナリをしていた。
出走表を見れば俺と同い年であったが…。
『ははは、』
笑っているのに
ソイツの走りに、俺以外みな容易く、ぽっきりと折れてしまっていて。
ただ、ひたすらに哄笑し続ける
どこでもやっているポニーカップの一幕のはずなのに。
『ソレ』は、このレースにおいてすべてを蹂躙し尽くした
『おもしれーヤツだなァお前!気に入ったぜ!
『なあ、お前名前は?』
『そうかァ。オレはな───』
……それからの記憶はない。
悪い夢でも見たかのような心地で、俺は『ソレ』を見やっていた。
『ソレ』との邂逅は、俺の人生にとって最も忌まわしい記憶だ。
その記憶があまりにも強烈だったせいで、あの後どうなったのか、どうやって家に帰ったのかを俺はよく覚えていない。
ただ、あの日以来俺が白毛に近しい色の芦毛のウマをどこか忌避するようになったのは確かだ。
……そして同時に、あの
ああなりたいと心から思ったのだ。
だから俺は───。
「よォ、お前が俺の同室のキャッチツーツーってヤツ?」
入寮の日、体育館が集められた新入生でごった返す中でそう声をかけてきた影。
その快活な声に振り返れば、そこには。
「…ん?なんだ、そんな悪魔でも見たような顔して」
年齢にしては隆々の体格(変わらない)。
こっちを見ているようで見ていない目(変わらない)。
美しい、芦毛の髪(あの日と…変わっていない)。
「俺はシルバギャングスタ、よろしくな!」
───────
─────
───
その子ウマは…生まれながらにして強かった。
体は途中から落ち着いたとはいえ、同年代よりも随分と大きく、それに伴い力も強く。
過程がてんでグチャグチャながらも最終的には『正解』を引き寄せる豪運と、それを支える優れた頭脳。
それから何より、ウマにおいて最も大切な『走ること』への天賦の才。
……その全てを兼ね備えた子ウマは、生まれながらにして『勝者』であったのだ。
だからだろう。
その子ウマはいつもひとりでいた。
『…』
強すぎることは、それだけで周りを恐れさせる。
人の輪に入ろうと笑顔を学んでも、返されるのはまた恐怖や嫌悪の表情。
『アハ、』
誰も、子ウマを受け入れてくれなかった。
親やきょうだい以外は。
けれど。
「行くぞ、ギャングスタ」
「おーよ、キャッチー」
【銀色のギャングスタ】:
シルバギャングスタ。
父シルバアウトレイジ母【瞳に夢を】の三冠牡バ。
生まれながらに生物として強すぎて恐れられていた過去を持つ。
そんな彼を受け入れてくれたのは家族のみ…だったが?
【理不尽】:
キャッチツーツー。
父【思いを胸に】母父【王者への道程】の牡バ。
【銀色のギャングスタ】のライバル。
史実では生まれた場所からそれぞれ厩舎に入るまで一緒の場所にいた幼なじみ(とはいえそれを認識していたのは【理不尽】だけのようだが)。
そんな関係性からウマ世界ではポニーレースでけちょんけちょんにされてのスタートに。
他はみんな心折られたのにコイツだけ脳を焼かれている。
実馬時代からのライバルの特権かな?