さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そうだと、言って。



ライバル(唯一)、だよね?

その顔を見ると、少し胸が苦しくなる。

いつだって穏やかな年上としての顔を崩さないその人が年相応に笑う時。

その対象が自分ではないのだと分かる時、…すごく胸が苦しくなる。

 

お前と俺は幼なじみで、父親同士の仲がよかったから一緒にいる時間が多くて。

だからそんな風に笑わないで欲しいと思うし、……俺以外の誰かを特別扱いしないでほしいとも思うンだ。

 

「どうしたの?」

 

自分を心配して手を伸ばしてくるお前が、いつもより近く感じる距離にいることが嬉しいような苦しいような気持ちになる。

触れた指先を振り払ってしまえばいいのか、それともこのまま受け入れればいいのか分からない。

ただ振り払う事なんて出来なくて、そのまま手を掴んで引き寄せる。

 

「えっ」

 

驚いた声を上げたお前の手を絡めとって、きぅと手の甲に爪を立てる。

痛いはずなのに何も言わないお前はきっと、今何をされているか分かっていないんだろうなァ。

そう思いながら、そっと唇を寄せれば慌てる気配を感じたけれど気にせずその首筋に噛み付いて。

跡を残すように強く歯を立てれば、小さく息を飲む音が聞こえてきた。

……あぁ、やっぱり気づいてなかったんだな。

 

「……ごめんね」

 

滲み始める傷口を手で押さえながら。

困った様に眉を下げているお前を見ても、どうして謝られているのか分からずに首を傾げることしか出来なかった。

 

 

「どうしたの?」

「なにが?」

「その…絆創膏」

 

キミの首筋には大きな白い絆創膏。

昨日はなかったソレに指をさせば「あぁ、少しね」と。

なんでもないことのように()()()()()()()言う友人に違和感を感じてしまうのは仕方がないことだと思う。

 

(まさか)

 

ふと思い浮かぶ可能性。

それはとても突拍子もないことで、でも友人なら有り得そうなことでもあると思ってしまう自分がいることにも気がついてしまった。

 

「あのさ……」

「んー?」

 

カリ、と剥がれかけていたところから。

爪を引っ掛けて、ピィと。

小さな音を立てて剥がされた後にあるそれに思わず目を見開いてしまう。

 

「ねぇ、」

「え、あ、いや…、う、うん!ちょっとした戯れでさ、怒らせちゃったんだよね!…アハハ」

 

嘘つき。

深深と刻みつけられた跡は牽制よりももっと強い感情を持っているように見える。

それを考えると何だかチリチリする。

燻っている火種。

 

「…そう」

「んぇ?」

「キミは、そんな奴なんだね」

 

思わず口からついた言葉は自分とは思えないくらいの重みを持って。

キミの困惑をよそにグルグルと、気持ち悪くなっていくのをどこか他人事として感じていた。

 

「ね、」

「な、なに?」

「僕は…キミの、」





【銀の祈り】:
シルバープレアー。
取り合われている。
けどクソにぶにぶなので結構なことやらかされても『機嫌がよくないのかな?』で済ませてしまう。
また噛み付きぐらいは幼い頃からよくやられていたので特に気にしていないらしい。…なんか年々、噛む力が強くなってるような気はするけれど。
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