さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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それが、幸福だって。



実質…

「おはようございます、先輩」

「…は?」

 

目が覚めると、知らない場所にいた。

昨日はちゃんと自分の部屋で寝たはずなのに。

 

「何が、どうなってるんだ──【飛行機雲】」

「とりあえず朝ごはんを食べながら話しませんか?おなか、減ってますよね」

「…あぁ」

 

俺は、昨日をもって"仕事"から引退した。

そして今日、この場所を去って懐かしの実家で余生を過ごすはずだったのに。

 

「いただきます」

「……いただきます」

 

横には、慣れ親しんだ後輩が座っている。

そしてベッドに備えつけらしいテーブルの上には、美味しそうな朝食が並べられている。

 

「……うまい」

「それはよかったです!」

 

後輩は屈託のない笑顔で俺に笑いかける。

その表情に少し違和感を覚えるが、ゆるく頭を振ることで懸念を振り払う。

 

「それで?この現状は一体全体どういうワケなんだ」

「それはですね…」

 

【飛行機雲】が言うには、こうだ。

 

「先輩は昔から無理をしがちなんですよ」

「みんなの期待を背負い込んで、それを達成して、また背負い込む」

「そしてそれが小さな失敗はあっても多大な損害を被るほどの失敗はしない…言うなればココ大一番は決めるモノですから期待が増幅していって」

「よくもまあ、先輩は第二のバ生を走りきったものだと思いますよ僕は」

 

朗々と語る。

口を挟みたくとも挟ませない語り口はどこかそういった類の演劇でも見ているかのようだった。

 

「先輩は、もう十分すぎるほど頑張ったんです」

「だからこれからはゆっくりしましょうよ。先輩」

 

──は。

なんだそれは?

お前に言われなくとも、俺はこれからゆっくりするはずだったのに。

そんな俺の気持ちなんてお構いなしで【飛行機雲】は続ける。

 

「僕としてはですね……先輩が僕の側にいてくれて、幸せって言ってくれまらすごく嬉しいんですよ」

「先輩のご両親にも許可をいただいて、こうさせてもらっていますし!」

「……ん?」

 

いま、信じたくない言葉が聞こえた気がしたな?

『俺の両親に許可をもらって』?

 

「ちょっと待て」

「はい?」

「いや、待ってください」

「先輩?」

 

俺は頭を抱えた。

いや、うん。

ちょっと待ってほしいな?【飛行機雲】さんや。

なんで俺の両親にサラッと許可とってるんですかね?

なんて俺の様子を気にも留めずに【飛行機雲】は続ける。

 

「だからですね、僕は先輩の支えになりたいんです!」

「……そうか」

 

とりあえず一旦置いておくことにしよう。

うん、そうしよう。

 

「なので───僕に養われて生きてください、先輩♡」

「ちょっと待て」





【飛行機雲】:
後輩。
先輩こと、シルバアウトレイジのことを大切に思っている。
大切に思っているので壊れないようにしないといけないと思った。
なにせ今も昔もシルバアウトレイジというウマは自分の許容量を分かっていないので。
呑み込みすぎて爆発する前に…ね?
やさしい後輩でしょう?
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