さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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もしくは堕落。



幸福

まさか第二のバ生から退いたと思えば、可愛がってた後輩に養われるとは思わなかった。

そんなことを考えながら俺-シルバアウトレイジは用意されていた朝食を食む。

後輩手ずから作って置いていったらしいそれは、出会い初めのころを思い出すと無意識に感涙しそうな出来のもので。

 

(はじめはもっぱら冷食しか食ってなかったヤツが…)

 

大きくなったモンだな、と年寄りじみた感想を抱きながら、俺は後輩が置いていったメモを手に取った。

 

『今日は一日仕事です。夕食までには帰ります』

「そうか」

 

どうやら今日は大変らしい。

 

「なら……久々に掃除でもしてやるか」

 

そうと決まれば善は急げだ。俺は朝食をさっさと平らげると、普段使っていない物置に直行するのであった。

 

 

僕-【飛行機雲】の独断専行は思った以上によくいっていた。

少しばかりは抵抗されるかと懸念していたが先輩こと、シルバアウトレイジの順応性は目を見張るほど高く、僕が用意した食事も抵抗なく口にしてくれている。

 

「先輩…すごいですね」

「だろ?」

 

何も知らない先輩は、外に出られない代わりに細々とこの部屋の掃除をしたり何だりしている。

僕が買ってきたものでお菓子を作っていることもあれば、料理をすることもあるし、本を読んだりゲームをしたりも、している。

 

「久しぶりに自分が作ったの以外が食いたくなったんじゃないか?…つーわけで俺が久しぶりに料理してみたんだけど。ほら」

「ぁ、ん。…美味しいです!」

「そりゃあそりゃあ」

 

ニカリと笑う先輩にこちらも笑みを返す。

幸せな日常。

それ以外には…ない、のだけれど。

 

 

先輩がこの部屋にいることを知るのは僕だけだ。

先輩のご両親は先輩が僕と一緒に暮らすということを知っているだけで詳しいことは知らない。

というか先輩自身も、この部屋がどこに立地しているのか分かっていないだろう。

 

「ただいま帰りました」

「おう、おかえり」

 

玄関で靴を脱いでいると先輩がやってくる。

そしてそのままリビングに直行すると、僕の鞄をひったくってソファーに置き、キッチンに向かう。

 

「今日のご飯は?」

「今日はハンバーグ」

「……やった」

「ふぅん」

「いや別に?ただ久しぶりだなって思っただけで!」

「はいはい」

 

そんな会話をしながら僕は部屋着に着替える。

にしても。

先輩は適応力がありすぎる。

いの一番に外に出ないでくださいと言ったらそのままだし、こんな窓もない部屋なのに…普通に暮らしている。

 

(……いや、いいことなんだけど)

 

この生活は僕のわがままだ。

先輩が受け入れてくれるから成立しているだけの、歪な関係。

 

「先輩」

「ん?」

「……いえ、なんでもないです」

 





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
気づいているのかもしれないし気づいていないのかもしれない。
でも【飛行機雲】のことは憎からず思っている。
また今暮らしている部屋については「暇になったら寝とけばいいだけだしな」とのこと。
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