ただの事務員だよ。
トゥインクルもドリームトロフィーも勇退して、普通に一般人として過ごしたけども、どうしても『走る』ということに関わっていたくて気づけばトレセン学園の事務員になっていた。
あの頃は気づかなかったこともたくさんあり、新鮮だったりひいこらしたことも多々あったが、それを差し引いても今を生きる学園生たちを見ると心が洗われる気分になる。
「おーっす! 事務員さん!」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。今日も元気そうだねぇ」
よっこらせ、と段ボールを代車に乗せていると掛けられた声に振り向いて返答を返す。
「今日も大変そう!」なんて笑う子たちはこれから授業に向かうところらしい。
「あ、チャイム!」
「げっ!」
「あ〜…、気をつけなよ〜…っと?」
ぶんぶん手を振って去っていく生徒たちに手を振り替えしているとふわりと風に乗って香る匂いがあった。
「ん?」
どこかで嗅いだことのある匂い。
たぶん知り合いの誰かがつけていたか何かの香水の匂いだったはず…なのだけれど……。
(あれ?……誰だ?)
うぅむ、と考え込んでしまう。
こんなにもはっきりとわかるくらい匂っていたというのに思い出せないとは……。
そんな風に首を傾げる僕の耳に「先輩」と声が入るのは同時だった。
「へ…?」
「お久しぶりです、先輩…!」
「え、あれ?!なんで!?」
「今日は理事会の役員としての会議で…」
驚くのも、無理はない。
何故なら駆け寄ってきた相手はかつての後輩であったからだ。
後輩と言っても僕より1つ下なだけであり、学生時代は生徒会長を勤め上げ、今では…という。
将来有望なんだろうなというのは当時から思っていたがまさか本当になるとは思わなかった。
「そっか、キミたしか理事会のメンバーなんだっけ」
「はい。 まだまだ未熟者ではありますが日々精進してますよ」
今の光景、誰かに見られたら大変そうだなぁ…。
だって往年の大スターとただの事務員が親しげに話してるんだぜ?
学園新聞とかに載った日には大変なことになりかねないだろう。
まぁ、でも……それはそれで面白いかもしれない。
「先輩こそどうしてここに?」
「僕はほら、事務員だからね。
今は名簿や備品の管理なんかをしてるんだよ」
「そうなんですか」
「うん。……それにしても大きくなったね〜」
感慨深いものを感じながらその頭を撫でると後輩は恥ずかしそうにはにかみながらも受け入れてくれる。
こうやって素直なのは相変わらずだ。
「先輩も変わりませんね」
「そりゃあまぁ……。けど今の子たちにはお年寄りって、よく言われるよ?僕、まだまだ現役なのに」
「それは…その体つきで重いものを運ぼうとするからでしょう?」
「…テヘ」
「先輩…」
そんなこんなで、話をしていると。
後輩が職員さんに呼ばれていった。
会議がもう、始まるらしい。
「では」
「うん、またね」
事務員さん:
元学園生の現事務員さん。
小柄なお年寄りなので、重いものをひいこらしているのを現役の子たちに目撃されるたびに手伝われているすがた。
ホンワカした感じがとても人気らしく、事務員部屋はいつも話をしにきた+お茶菓子をたかり…もらいに来た生徒たちで満杯である。
そんな事務員さんなので「昔ここの生徒だったんだよ〜」と教えられては「生徒は生徒にしてもサポート科だろ、流石に…」という共通認識があるとかないとか…?
事務員さんの後輩:
往年の大スター。
学生時代は生徒会長を勤め、現在では学園の理事会の一員である。
なかなか自由時間が取れない忙しいウマではあるが、忙しい時間の隙間をぬっては学園で働いているかつての先輩・事務員さんに会いに行き、少ない時間ながらも羽根を伸ばしているらしい。
たぶん生徒が出歩いてる時間に学園にいたら握手とか遠巻きにきゃあきゃあ言われてるタイプの御方。
だからこういった時間にしか気軽に訪れられないんですね(にっこり)。