さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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でも仕方ないよネ!



ここまでフラッと出ていい御仁ではない

孫が動画配信ってのをしてるらしい。

それを知った僕はその時点では「ふぅん」と思うだけだったのだけど「おじいちゃんも出て!」と頼まれてしまえば、

 

『今日は特別ゲストが来てま〜す!』

『あ、どうもシルバーバレットです』

 

出演する(出る)しかないよなァ!?

……というわけで、孫のチャンネル?にお呼ばれして生配信をすることになったのだけれど──。

 

『えーっと、じゃあまず経歴紹介などお願いします! 』

『はい、シルバーバレットです。いちおう日本初の凱旋門賞・BCクラシック制覇バで…今現在も芝2400mのWRを保持しています。本日はよろしくお願いします。…こんなので、大丈夫?』

『大丈夫だけどかったいよ〜!それテレビ出るときの喋り方じゃん!もっとリラックスリラックス〜』

『そう…?』

 

難しいな、とつぶやくと孫娘から笑い声が上がる。

 

『いつも通りの話し方でいいんだよ!ほら、みんなもそっちの方がいいって!』

『ああ……うん、わかった』

 

たしかにそうだね、と僕もつられて笑ってしまう。

 

『では気を取り直して!次は──』

 

 

動画配信って案外楽しいもんだな、と思ったのが前回。

そして今回はその動画を見た他の孫から頼まれ…。

 

「う〜ん。…コレ、踊ればいいの?」

「うん」

「できるかなぁ?」

 

見せられている動画は今現在のウイニングライブの映像だ。

僕が現役だったころよりも幾分かダンスが高度化しているそれを…踊るのか?マジで?

 

「おじいちゃんなら余裕だよ!」

「そんなことないと思うんだけど……」

「だっておじいちゃん今もダンス上手だし、歌もうまいし!!俺に教えてくれたじゃん〜!!フリは古かったけど!」

「……」

 

まあ、たしかに教えたことはあるけれどもさ。

でもそれはもう何年か前の話であって……。

 

「それに今回()るところなんてサビの部分だけだしさ〜」

「……」

 

それもそうなのだが……しかし……。

 

「ねっ!!」

「…はいはい、分かった分かった」

「やりぃ!あ、これ衣装ね」

「んっ?」

 

困惑の声を出すも「着替えてきて〜」と背を押されてしまえばやるっきゃないというか…。

 

「……」

 

渡された袋を広げてみると、そこには現役時代の衣装があった。

 

(懐かしいな)

 

引退してからは一度も袖を通していなかったけれど、…あ、コレ去年ぐらいに出たレプリカのやつか。

 

「……よし」

 

せっかくだから着て、やるだけやってみるか。

それで動画としてボツにされればいいってだけの話だしな!

……と。

思ったのは甘い考えだったようで。

 

「見てみておじいちゃん、スッゲェ再生回数!」

「……」

 

僕の目の前には、ニコニコ顔の孫とそのスマホ画面があって。

そこに映っているのはかの踊ってみた動画なのだけれど……なんというかコメント数が半端じゃないことになっている。

 

「ははは」

 

なんか、もう…乾いた笑いしか出ないや。





僕:
シルバーバレット(生存√ウマ軸のすがた)。
ネットには疎いが電話など必要最低限の機能は扱える程度の御方。
普段はのほほんと暮らしているが孫たちなどから出動要請が出ては動画や写真などに登場してくる。
自身のSNSは長子であるシロガネハイセイコが管理しているためどういうことになっているかよく知らなかったりする。
まぁハイセイコなら大丈夫だろ、の心持ちとのこと。
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