さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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まぁ、この人が一番のファンみたいなとこあるからねぇ…。



これが推し活…!

なぁに、これぇ?

自分の前にぽて、と置かれたぬいぐるみを鼻先でつつく。

シルエットからして馬なのはたしかだ。

そしてチープなものではなく、精巧に、素材に気を使って作られたものだとも。

 

あ、こんにちは。

シルバーバレットです。

元競走馬などこにでもいる馬です。

今は子どもや慕ってくれる子たちと共に牧場で暮らしているよ。

…それはそれとして。

 

(いきなり渡されても、困るんだよなぁ…)

 

馬房でぼうっとしている折に世話をしてくれるヒトが笑顔で持ってきたぬいぐるみ(馬)。

色はほぼ黒…だけど片方の耳から目にかけて白い布が使われている。

馬のぬいぐるみにしても不思議な見た目をしているソレをまじまじと見つめているうちに、ふと思い出すことがあった。

そういえば以前テレビで見たことがあるような……。

確かあれは……そうだ!

競馬番組だったと思うけど、その番組で紹介されていた馬がこんな感じじゃなかったかな?

そのあと僕の子であるハイセイコやヒーローも紹介されてたし、このぬいぐるみはそれを元にして作成されたのだ!

きっとそうだ!

…でも。

 

(こんな柄の子、僕の子にいたっけ…?)

 

 

そのプロジェクトが持ち上がったのは彼の愛馬であるシルバーバレットが引退し、その初年度産駒が八面六臂の活躍をしはじめたころだった。

 

「ぬいぐるみを作るぞ」

 

その男-白銀仁(しろがねひとし)はシルバーバレットをそれはそれは溺愛している。

誰よりも小柄ながら、運命に抗い、最後は世界一の栄光を獲った存在を。

そんな彼の言葉を聞いた時、周囲の人間はこう思ったという。

───また始まったか、と。

しかし彼はいつものように妄言を口にしたわけではないらしい。

ちゃんとした理由があってのことだったようだ。

曰く、最近になってシルバーバレットやその産駒に関わるグッズを出していいかと打診が多くあった。

最初は断っていたものの、あまりにも打診がさまざまなところから繰り返しかかるため、なら自分で作ってやる!と。

幸いこの白銀家はそこそこの規模を持つグループだ。

それに加え、みなシルバーバレットが成した功績を知っているので…。

 

「好きにしてください……」

 

そういうことになったのだという。

 

 

そこから紆余曲折、侃侃諤諤の議論があり出来上がったのが──シルバーバレットのぬいぐるみであった。

 

「ほら見ろバレット。馬主さんがお前にってさ」

 

持ってこられたぬいぐるみ(じぶん)を当の本馬は不思議そうに見やる。

それをどう受け取ったのか、世話をする男は満足げにうなずいた後、そそくさと去っていった。

 

『なぁに、これぇ…?』(ころころ、ころころ……)(ぬいぐるみを転がす音)





僕:
シルバーバレット(実馬のすがた)。
ぬいぐるみをもらった。が、僕の子にこんな柄の馬いたっけなぁ…?という状態。
実はひらがな・カタカナ程度なら意味を認識できる賢いウッマ。
なので牧場の人から見せてもらった自産駒の特集ビデオを良く楽しげに拝見しているとか。
僕の子…みんなかわよ……!

馬主:
名を白銀(しろがね)
初の所有馬が僕だったのが運のツキ。
そのため脳を焼かれに焼かれ、引退式のために歌(『さよならはまだ言えない』)を作ったりした。
このたび、ぬいぐるみ作成にも着手。
試作品第1号はもちろん愛馬である僕であり、それを皮切りに僕に列なる馬のぬいぐるみを作っていく。
また僕産駒が活躍に活躍を重ねるたびに脳焼きが重ねられ、ぬいぐるみの数も…。
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