さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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本当の出会いなど、一生に何度あるだろう?


『運命』なんかじゃない

きっと『天才』とはあの人のようなことを言うのだろう。

そんな話を同業にすると同年代~歳下は頷いて同意するが、この職業に就いている期間が長い人間ほどその言葉に首を振るのだった。

 

「あの人は、白峰さんは『天才』なんかじゃないよ。

キミは昔の白峰さんを知らないからなぁ」

 

競馬界の顔役であり、『天才』の名を欲しいままにするその人も"彼"を評する際そう言って苦笑した。

俺が知っているあの人はあの馬と出会ったあとだから。

 

「僕だって白峰さんと出会ったのはあの馬と出会ったあとだったよ。

元から騎乗の上手い人だったから『なんでG1を獲れてないんだろう』と言われてたけど、ねぇ?」

 

白峰透という元騎手がいる。

交通事故により、騎手から遠ざかり調教師へと転向した男だが、

 

『人気薄の手網を握ったあの人に勝てたためしがない』

『ありえないコースをとって勝つ。俺よりもあの人こそが天才ですよ』

『天才というよりは努力の人だよ。でも、』

 

白峰透という男を語るにおいて挙げられる名前がある。

挙げられる、馬の名前がある。

 

『シルバーバレットに出会ってからの白峰さんは、』

『シルバーバレットが引退したあとは本当に神憑りの騎乗ばかりだった。ライバルだけどもっと白峰さんの騎乗が見たかったな』

『シルバーバレットが引退してからポンポン訳のわからない騎乗をしていた。それでも勝つんだから笑うしかなかったよ』

 

天才を天才にしたのがスーパークリークなら、怪物を怪物にしたのがシルバーバレットなのだろう。

 

 

シルバーバレットと出会うまでの白峰透は優等生といった騎乗をする騎手であったらしい。

その頃から人気薄の馬を任せると上手いという評判はあったが、勝つべきところを勝ちきれない、そんな騎手だった。

 

けれどあの日、あの時『運命』と出会った彼は今までの勝ちきれない姿を払拭するように破竹の勢いを見せた。

シルバーバレットの主戦騎手をしていたため、なかなか他の馬に乗ることはなかったが、シルバーバレットが怪我で離脱している間に乗った馬はそのほとんどが本来のスペックからは考えられないほどの勝ち方をし、負けた馬であっても掲示板を外すことはなかったという。

 

しかし、白峰透の実力が遺憾無く発揮される相手はやはりシルバーバレットで。

シルバーバレットは規格外の馬だったと今では言えるが、あの頃はサラ系であり、体格の小さすぎるその馬に注目する人間はいなかった。

そんな馬が不滅のワールドレコードを出すなんて、また海外レースを制するなんて誰も思わなかったのだ。

 

だが、白峰透はシルバーバレットを見出した。

 

「だからあの人たちの出会いは『運命』と言うよりも、」

 




『必然』なんだ。

白峰透:「天才」の再来。
この話の中では元騎手・現調教師。
元が優等生寄りの騎手であったためどの戦法でもそつなくこなすが一番合っていた戦法は逃げ。
シルバーバレット引退後は何となくでコースを取ったり、何となくで騎乗している馬の戦法を変えたりして勝ちを連ねた。
さっきまで後ろにいたのにいつの間にか前にいる系騎手。
サンデースクラッパの主戦騎手としてアメリカに行ってたりもしたので日本だけでなく海外でも騎手としての評価が高かったりしそう。

シルバーバレットの初年度産駒シロガネハイセイコの手綱を握ってダービージョッキーになってたり。
しかしその後、菊花賞で同じく初年度産駒のシロガネヒーロー(母父タケホープ)に『シロガネハイセイコ、お前のライバルは俺だー!!』との実況と共に差し切られて負けてる。

『人気薄の馬を任せたらいちばん怖い騎手』と引退後も名が挙がるほどだが、本人はその騎乗を勘でやっているので、他人に説明ができない。

訳のわからない勝ち方をする騎手であったため、若手からは『天才』と評されるが古くから彼を知る人ほど『鬼才』『神憑り』と評する。
シルバーバレットと出会って『秀才』から『鬼才』へと変わった。
シルバーバレットに騎乗していたがゆえに何かそういったモノを培ったのでは?という与太話もあったり。

シルバーバレット引退後の実況で馬の名前を差し置いて『白峰が来たぞー!!』やら『いちばん怖い男がやって来た!』とか言われてそう。

幼い子どもを助けた末の交通事故の後遺症により騎手を辞めざるを得なかったことを今でも惜しまれている騎手である。
不慮の事故による引退を惜しまれているけど事故にあった理由を知っている人々は「白峰さんらしい」と苦笑するんだ…。
もしかするとその庇われた子どもが未来で騎手になっているのかもしれない。
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