さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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綺麗なところだけ。

【追記】
修正ありがとうございます。



呑み込んで

ふわりと漂ってきた匂いに、【飛行機雲】がむんずとその腕を掴んだのは半ば反射的であった。

 

「…【飛行機雲】?」

 

一方、腕を掴まれた方である先輩こと、シルバアウトレイジはひどく困惑した顔をする。

 

「…、」

 

ふわりと香るは、甘い匂い。

何かしらの香水だろうと、ひと嗅ぎで察せられたソレはしかし、いつものシルバアウトレイジを知っているとどうにも…似合わないもので。

制汗剤の匂いがするならまだしも、これは、その、まるで。

 

「先輩」

「な、なんだ?」

「……昨日、誰かと一緒にいました?」

 

ぎくりと肩を跳ねさせるシルバアウトレイジに【飛行機雲】は確信する。

この匂いは、香水の匂いだ。

それも女物の……。

 

「……ッ!!!」

 

瞬間、【飛行機雲】は反射的にその腕を強く引っ張っていた。

もはや『本能』だったのかもしれない。

自分の知らない先輩の匂い。

自分が、自分が…先輩のことを一番知っているはずなのに。

 

「ひ、【飛行機雲】?」

「先輩、誰といたんですか」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……ッ」

 

困惑した顔でこちらを見るシルバアウトレイジに【飛行機雲】はなおも詰め寄る。

もう、我慢ができなかった。

香水の匂いを纏う先輩も、知らない誰かといた先輩も、全てが憎らしくて仕方がない。

一番近くにいる自分でも、先輩を染め上げることは叶わないのに。

この香水の主はいとも簡単に、先輩を自分の色に染め上げることができるのだ。

 

「先輩、誰といたんですか」

「い、いや……」

「誰 と ?」

「……ッ!」

 

言い淀むシルバアウトレイジに【飛行機雲】は更に詰め寄る。

そして、その腕を強く引いて……。

 

「ねぇ?」

「…いい加減に、しろッ!」

「あだっ!?」

 

体の位置が近くなったのと同時に頭にかかる衝撃と痛み。

頭突きされたのだ、と分かるよりも先に口から「この石頭め…」と言葉が飛び出して。

 

「……ッ、」

「先輩?」

「この……バカが!」

 

涙目でこちらを睨むシルバアウトレイジに【飛行機雲】はハッと我に返る。

そして、自分が何をしたのかを理解して……。

 

「せ、先輩、ごめんなさい……!」

 

慌てて謝罪の言葉を述べるが、時は既に遅し。

ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった先輩に【飛行機雲】は軽く泣きそうになりながら追いかける。

チラリと見えるシルバアウトレイジの手首にはクッキリと【飛行機雲】の手の跡が残っており、「これはしばらく跡が残るな」とぼんやり考える。

しかし、今はそんなことよりも先輩が優先だ。

 

「先輩、ごめんなさい!本当にすみません!」

「……」

「でも、僕……僕は……!」

「……【飛行機雲】?」

 

ピタリと足を止めたシルバアウトレイジが不思議そうにこちらを見やる。

その目に見つめられると、なんだか全てを見透かされているような気がしてしまって。

 

「な、んでもない…です」

 

自分の汚いところを、ゴクリと飲み込んだ。





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
大概制汗剤の匂いがするウマ。
香水の主が誰なのかはどうぞお好きに。
父親である【銀の祈り】かもしれないし、かの【瞳に夢を】さんかもしれない…。

【飛行機雲】:
後輩。
【銀色の激情】の傍に一番よくいるが故に匂いに敏感だった。
【銀色の激情】以外なら気にしないはずなのに、【銀色の激情】から自分の知らない匂いがすることにちょっと…。
また可愛い見た目とは裏腹に、ちょっと力を込めると痣を作ることができるくらいには力が強い。
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