さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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どこにもいかないで。



空きっ腹への罰

ふと目を覚ますと、それに呼応するかのように「くぅ」と腹が鳴った。

本当はトイレのために起きたはずだったのに、一度空腹を自覚してしまったが最後しくしくと泣き始める空腹をどうこうする術は僕にはなく。

 

(…なんか、買いに行くか)

 

ササッと着替えて、徒歩ちょっとのところにあるコンビニへ行こうと鍵と財布を持って玄関に進み、さぁ行こう!とドアノブに手をかけると。

 

───…どこ行くの。

「はぇ」

 

ドンッ!とドアに勢いよく突かれる手。

まるで錆びているブリキの人形のようにギギギ…と振り返ればそこには先程までスヤスヤと眠っていたはずの同居人の姿。

 

───どこ、行くの。

「ど、どこって…」

───……また、置いていくの?…いや、置いていくのか。そうだった、シルバーはひどいウマだから。

「…寝ぼけてる?」

───すっかりと目は冴えてるさ。隣にシルバーが居なくて。

 

ドアノブにかけていた手に、そっと手が添えられる。

だがその強さは否応なしに僕の手をドアノブから力いっぱい引き剥がし、そのまま体を反転させられて、ドンッ!と背中をドアに叩きつけた。

 

「いっ……た」

───どこに行くつもりだった?

「……コンビニだよ。なにか買ってこようかと思って」

───…………なんで。

「…………え?」

───なんで置いていくんだ。どうして置いていくんだ。シルバーがつよいウマだからか?自分はいらない子なのか?なぁ、お願いだ。もうどこにも行かないでくれ……っ!!

 

ズルズルと同居人の体が下がり、果てには縋り付くようになる。

『置いていかないで』と泣きじゃくる様は親とはぐれた迷子の子どものようでどこか痛ましく、思わずその頭に手を置いてしまう。

 

「……どこにも行かないよ」

───……本当?

「うん」

───約束してくれるか?

「するよ」

(……いや、これじゃあまるで)

────────噓つき。

 

「え?」と聞き返す前に同居人がすくっと立ち上がる。

そして僕は見てしまった、その顔を。

いや、正しくはその『目』をだ。

 

(あ、れ……?この目って……)

 

どこかで見たような覚えがあるような。

そんなことを思っているとあれよあれよという間に体を持ちあげられて、そのまま玄関から寝室へと運ばれる。

 

「ちょ……っ」

───シルバーはつよいウマだ。

「……え?」

───だから、もう置いていかれたくないんだ。

「いや、だから……」

(あれ?なんか……)

───絶対に、逃がさないからな。

 

ぱたん。

ドアが閉じる。

…くぅ、と控えめに鳴った腹の音は虚しくも黙殺されるのだった。





僕:
シルバーバレット。
おなかが減ったのでコンビニに行こうとした。
とても仲の良い同居人がいる。

同居人:
僕と一緒に暮らしている。
普段は普通だが時折情緒不安定になるとか。
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