さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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分かってないのは当バ/当人ばかりのみ。



知らぬはふたりだけ

「助けてくれませんか?」

 

その日、トレーナーである男にかかってきた電話は元担当ウマ娘からのSOSで。

今までそういうことを言ったことがなかった教え子の元に慌てて駆けつけると、

 

「すみません、先生…」

「「「「先生!」」」」

 

 

元担当ウマ娘-その名をシルバーバレットに妹がいることを男は長年の付き合いで知っていたが、こんなにも多くはなかったはずだ。

そう思いながら四人の幼いウマ娘が自分を「先生」と慕ってくるのを相手する。

 

「…あ、すみません先生」

 

そしてねだられるままに最近のレースの話などをしているとお茶を人数分用意してきた彼女が戻ってくる。

「粗茶ですが」と差し出してくるのを有難く受け取り話を聞く。

 

「いや、あの…信じてもらえないかも知れませんが」

 

 

数日前、夢を見まして。

それが、普通の夢だったらよかったんですけどねぇ。

夢の登場人物が…まさかの三女神様で。

なんだなんだ!?と困惑していたら「在るべきものをそちらに送ります」だとか何とか。

で、不思議な夢だったなぁと寝ぼけ眼をしていたらその子たちが同じベッドに転がってて…、

 

「「「「おと、…お母さん!」」」」

 

というワケです。

 

 

まさかの未婚の母ですよ、ハハハ…と力なく笑うシルバーバレットに何とも言えない表情を浮かべる男。

それをじぃ、と見つめてくる幼いウマ娘たちを撫でながら、彼は思う。

 

(…とりあえずバレットが世間様に何も言われないようにしなくちゃなぁ)

 

そりゃあそうだろう。

今はもう勇退したが元がドリームトロフィーリーグの顔役だったウマ娘だ。

そんな彼女から突然()()()に近しい子どもがいればそれは色々と騒がれることになるだろう。

がしかし、

 

(その案が全然思いつかない…!)

 

己の弱い頭が嘆かわしい。

これだから『トレーナーになるために生まれてきた男』なんて言われるんだ!…などと頭を悩ませていれば、

 

「"けっこん"すれば、いいんじゃないです?」

「「え?」」

 

幼いウマ娘の中のひとりが、そう告げた。

ポンと、それが当然とでもいうように。

 

「それなら、みんなも異論ありませんよね?」

「「「さんせ〜」」」

 

そしてその言葉に他三人が笑顔で同意する。

結婚とはどういうことなのか年齢的にもよく分かっていないだろうに、その表情には嬉しさが溢れていて。

それは、まるで───。

ふと思い浮かんだ情景に、男は慌てて首を振った。

 

 

「ホントに鈍感過ぎる」

「同意」

「あんな関係してる男女を引き裂こうなんていうバカ、いないよなァ!?」

「でもそれを、当の本人たちだけが分かっていないワケで」

 

「「「「…はぁ、」」」」





元担当ウマ娘:
シルバーバレット。
ドリームトロフィーリーグの顔役として走りきり勇退したと思ったら三女神様から子どもを授けられてしまった娘。
でも自分を母と慕ってくる幼子たちを放っておけるはずもなかったので未婚の母をすることになる。
トレーナーのことは『運命の相棒兼戦友』だと思っている。

トレーナー:
白峰という名のヒトミミ。
トレーナーとして引く手数多。けれど人としての生活は…。
元担当であるシルバーバレットのことをとても大事に思っている。し、『運命の相手』と言って憚らない。
そしてシルバーバレットを乏されたら…何を仕出かすか分からない御方でもある。

幼子たち:
シロガネの名を冠する四人組。
それぞれハイセイコ、ヒーロー、ガール、シンゲキと呼ばれている。
どうやらハイセイコが長子枠らしい。

周り:
なんでアイツら付き合ってないの?(気ぶり)
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