さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

695 / 1416

幸福ですね。



僕らの暮らし

ああいう服を着られると、もっとぬいぐるみみたく見える…と思うのは自分だけだろうか?

「可愛いから買ってきた」というルームワンピースを着た同居人は、膝程度には優にある裾を揺らしながら洗濯物を干している。

 

───おはよう。

「あぁ、おはよう。今日は随分と早いね」

───久しぶりにキミと過ごしたいと思ったから。

「そう…?ふふ、いつも過ごしてるけどね」

 

最近、仕事が忙しかった。

朝早くから出て、夜遅くに帰ってきて。

ろくに話すこともできずに泥のように眠る日々だった。

だからこうしてゆっくり話せる時間はとても貴重で嬉しいものだ。

それにしても……、

 

「この服、」

───ん?

「どう、かな」

───似合ってるよ。

「…んへへ」

 

ゆるりとした服が好きな同居人は大概自分の体格よりも大きな服を買って、アレンジしている。

シャツのボタンが外れた際に玉止めもろくに出来ない自分からしてみれば羨ましい限りで。

…ところでその服の重さが重力に沿って開いた襟元には何とも言えない気持ちになるのだが……。

 

「どうかした?」

───何でもない。それより今日の予定は?

「特に何も考えてなかったな……」

───なら一緒に買い物でも行こうか。

「いいねぇ!なにが食べたい?」

 

どこか遠出というわけでもない。

行くのはどうせ徒歩少しのスーパーだというのに楽しそうな顔をする同居人に思わず頬が緩む。

 

───何でも頼んでいいの?

「僕に作れるものなら!」

───……胃に優しいものが食べたい。

「アッ…」

 

 

深夜に目を擦りながら起きた先で。

お疲れ様、と何とかベッドに入り込めたらしい同居人の頬を撫でる。

くっきりと刻まれた隈にちょっと申し訳なくなりつつ、そのまま指先を滑らせれば肌もカサついており。

 

(これだけ帰ってくるのが遅くても、いつも食べてくれてるからなぁ。…栄養のあるメニュー考えなくちゃ)

 

なんて思いながらも手は止まらず。

ぺたりと触れていた手を離すと今度はその手のぬくもりを無自覚に求めたのか、深く眠るその手に引っ張られ、強く抱きしめられ。

 

(…そういえば僕の体温が湯たんぽみたいで心地がいい、とも言ってたよね)

 

抱き締められても『熱い』とも思えないほどに触れた体温はぬるい。

しかしそれでも安心しきった顔を見ると離れようなどとは微塵にも感じず。むしろこのまま寝てしまおうかという気すら起きてくるもので。

 

「…………おやすみ」

 

小さく呟いてそっと瞼を閉じる。

そして次に目覚めた時はきっとまだその腕の中だろうと思いながら。





僕:
シルバーバレット。
ゆるい服が好き。
また尽くし型でもある。
今日も頑張ってるな〜。

同居人:
執着勢の誰かかも…?
幸せな日々を過ごしている。
だってご飯美味しいし家に帰ると僕が待ってるし。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。