さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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一緒にいたいの。



歩幅をあわせて、

シルバーバレットというウマは、普段でも放っておくとすぐに後ろを置いていってしまうようなウマだった。

後ろなんて振り返らないし、相手が必死こいて自分に着いてくるものだと半ば本気で、無意識に思っているフシがある。

先を急がずにはいられない、そんな。

けれど、そんなシルバーバレットが唯一振り返り、待つ相手がいることは誰もが知っていた。

 

「先生!」

 

…いや、待つだけではない。

共に歩くのだ。

そうまでする相手の名は白峰。

ただ一介のトレーナーである。

『シルバーバレット担当』の、という枕詞はつくが。

うずうずと、走りたい気持ちを我慢し共に歩く。

その様はまるで散歩中の犬だな……と思いながらトレーナーはその隣に並ぶ。

 

「……」

 

ちらりと横目で見てみると、どうにも楽しそうな顔をしている。

久しぶりの休みで、またふたり揃って何でもない日であったから使用期間間近な優待チケットを持って、少しばかり遠出して遊びに来たワケではあるが……。

 

(まあ、本人が楽しいならいいか)

 

トレーナーは思う。

そして、ふと考えた。

自分のようなおじさんと遊びに来て、この子は本当に楽しいのかな、と。

本当は学友なり何なりと来たかったけど予定が合わなかったとかそういうことはないだろうか?

もしそうだとしたら申し訳ないことをしたかもしれない。

今更だが。

 

「ねえ」

「はい」

「今日は誘ってくれてありがとうね」

「ああいえこちらこそ。お礼を言うべきなのは僕の方ですよ。いつも先生にはお世話になっているので」

「それはお互いさまだよ。僕もキミのおかげで毎日楽しいんだからさ」

「僕は大したことしてませんよ。ただ、自分がしたいことをやりたいようにしているだけですから」

「それが大事なんだよ。キミはもっと胸を張るべきだと思うなぁ」

「えーっと……はい?」

 

首を傾げるシルバーバレットを見て、トレーナーは苦笑する。

よく分からない、という顔をしながらも「先生が言うなら…そう、なんでしょうね」と言って。

 

「そう言えばですね、先生」

「うん」

「ずっと…前々から、先生のことを誘おうとしていたんです」

「えっ」

「けれど、僕は意気地無しなので。こんな季節外れというかピークではない時に誘ってしまって…」

 

しゅんとするシルバーバレットに慌ててフォローを入れる。

確かに人はまばらだが人が少ないからこそ色々と満足に楽しめたのだし、と。

 

「…先生」

「ん?」

「やっぱり先生はやさしいですね。…よし!じゃあアソコの売店に行きましょうか!」

「うん(…切り替え早いなぁ)」





ふたり:
シルバーバレット&そのトレーナー。
互いにそこそこの感情を持ってはいるがあとひと押しとはあまり考えていない。
でもひと押しされたのなら気軽に倒れてあげるくらいには…みたいな関係性。
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