さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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それでも。



知らない慕う子

「先輩!」

 

そう元気よく呼ばれたのに、こてんと首を傾げる。

親しげに腕を組んできたその姿に…見覚えは無い。

だってこんなにも可愛い相手、一目見れば何か印象に残っているだろうに。

けれども、シルバアウトレイジの目の前にいる相手は…。

 

「僕ですよぉ、僕!あなたの可愛い後輩の【飛行機雲】ですっ!」

 

きゅるん、と大きな青色の目を瞬かせ、あざとく小首をかしげる姿。

 

「あーっと、ごめんな?ちょっとキミとは会った覚えが……」

「…」

 

周りの視線が痛い。

 

「えぇ~!?ヒドイじゃないですかぁ、あんなに可愛がってくれたのにぃ!」

「語弊がある!」

 

ぎゅうぎゅうと何故だか抱き着いてくる自称:後輩に、俺は頭を抱えるしかなく、

 

「先輩。僕、先輩のご飯が食べたいです!」

「……ん」

 

 

食事の準備をしながら、俺とこの後輩は中々に親しい関係だったらしいと考える。

何故なら俺が料理出来るとこの学園で知っているのはトレーナーと血縁のみ。

……しかし、本当に思い出せない。

確かにどこか懐かしさを感じるのだが、それが何故なのか分からないし、何よりここまで親しくなった経緯も何もかも。

 

「僕、先輩のことずっと探してたんですよ〜」

「…そうか」

「先輩、すっごく脚が速いものですから!こうやって追いつくのも一苦労で…」

「……」

「でもこうして会えて良かった〜。これから毎日一緒に居られますよね?」

「……そうだな」

 

ニコニコ笑うその顔を見つめながら、俺はふと考える。

『あれ?もしかして墓穴か何か掘ったか?』と。

 

 

先輩は、はやかった。

僕なんて置き去りにして、さっさと走っていってしまった。

『めちゃくちゃ俺のことが好きでも、追ってくるなよ?』なんて茶目っ気たっぷりに言って。

…強い人だった。

本当に、本当に。

 

誰にも、悟らせないまま。

普段通りに。

いつも通りに接し続けていて。

僕はそんな先輩を敬愛していた。

だから追いかけてきた。

先輩と、一緒にいたくて。

なのに、なんでかなぁ?

どうして先輩は僕のことを忘れてしまったんですかね?

ねぇ、先輩。

 

───せんぱい。

 

「……どうした?」

「ぁ、え、いや…」

「俺のこと呼んだくせに何もないはないだろうがよ」

 

そう言われながらも。

ほい、と口の中に放られた唐揚げを飲み込んで、へらりと笑みを浮かべる。

 

「美味しいなって思って!」

「そりゃどーも」

 

少しだけ照れたように頬を掻く先輩に微笑んでいれば、「ほれ」とお皿を差し出される。

 

「食え。そしてでっかくなれ」

「太っちゃいますよ〜!」





【飛行機雲】:
後輩。
ゆっくり、でも追いかけてきましたよ。
先輩のことを慕っている。
だがちょっと不穏になる時も…?

【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。先輩。
【飛行機雲】に『誰?』しているが慕われるのは何だか満更でもないためヨシヨシしている。
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