さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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運が悪いのか何なのか…。


勝利と負傷

冬になって、春になって、秋になった。

僕は相変わらず度々レースに出るだけ。

レースを見に来ている人の数もあまり変わらないのでそこまで大きなレースには出ていないのだろうと考えられる。

 

秋になって、また去年と同じレースに出ることとなった。

でも前よりも人が多いような気がする。

なんでかは分からぬまま、いつも通りに走った。

今年になってグレード制というのが導入され、シルバーバレットもいくつか重賞を取った。

今回は、シルバーバレットにとって2回目の毎日王冠。

出走馬にはあの三冠馬ミスターシービー、今年の宝塚記念を取ったカツラギエース、去年のオークスを取ったダイナカールなどがいるため注目されているレースといえよう。

シルバーバレットの方も落ち着いているため問題はなさそうだ。

 

そして、レースが終わってみればシルバーバレットが2着のカツラギエースを3馬身置き去っての快勝であった。

が、しかし、

 

「バレット…?」

 

喜んだのも束の間、シルバーバレットが骨折していることが分かった。

剥離骨折のため休養をすればレースには戻れるようだが、

 

「お前は強いのになぁ…」

 

またこの馬の実力を証明できる大きな舞台から離れざるを得ないことに僕はため息を吐くのだった。

僕だ。

まさか骨折するとは思いもよらなかった。

とりあえず休養ということになり、ゆっくりしているがどうにも走りたくて走りたくてたまらない。

でも、僕のことを待ってくれている人がいるのは事実なのでこれ以上怪我が悪化しないようにじっとしている。

 

そうそう、そう言えば手術したんだよね。

僕の骨折は剥離骨折で、足の中に骨片があるからそれを取り除いたわけなんだけど、意外と怖かった。

注射は人間時代から特段怖いとは思わなかったのだけど手術は別だった。

できればもう二度と手術のお世話にはなりたくないなぁ…。

『おけーり、チビ』

 

休養中、放牧として僕はリリィのいる牧場に帰ってきた。

お腹の大きくなっているリリィと話をするとまたもうちょっとしたら僕の弟か妹が生まれるらしい。

弟か妹の父親は僕のお父さんと同じだという。

 

『お前が頑張ってるお陰だな』

 

そうリリィが言ってくるのにちょっと照れてしまう。

リリィは『おうおう、照れるんじゃねェ』とからかってくるし…。

まぁ、一番伝えたい相手に頑張ってるよってことを伝えられたから良しとしよう。

 

それにしても、やっぱりココは落ち着くなぁ。

僕がいつ引退するのかはまだ分からないけれど、最後まで頑張って、ココに帰って来れるといいなぁ…。

 




僕:剥離骨折した馬。
一応ここでミスターシービーなどと戦っているが本人(本馬?)はそのことに気づいてないし、そもそも人間時代が競馬に関して興味がなかったので相手の名前を知ったとしても「へー、かっこいい名前だね」で終わらせてた。
どうやら弟か妹かができるらしい。
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