期待、してしまった。
そのウマに話しかけられた時、メジロマックイーンは少し浮き足立った。
なにせそのウマ──シルバーバレットは誰もが知る有名人であるから。
誰からも声をかけられ、慕われ、無自覚ながらも上に立つ者。
しかしあまり他人を傍に寄せつけない孤高の存在。
だが、
「マックちゃんマックちゃん」
その浮き足は、直ぐに地についた。
まるで懐きに懐いた犬のように自分に走りよってきては、な孤高の存在(であったはずの人)にメジロマックイーンは困惑を隠せない。
「な、なんですの?」
「マックちゃんって、ハンバーガー好き?」
「え? えぇ……まぁ」
「じゃあさ、今度一緒に食べに行こうよ!」
「……は?」
思わず耳を疑ったが、シルバーバレットは構わず続ける。
「僕ね! そろそろ出るはずの季節のメニューですっごく楽しみなのがあるんだよ! だから!!」
「…………」
そんな無邪気な笑顔を見てしまえば、メジロマックイーンはもう何も言えなかった。
ごくありふれた友人のように、親しげに話すシルバーバレット。
そのウマの言動に、メジロマックイーンは困惑しつつも、どこか心が温まるような気がした。
「マックちゃんって、結構食べるんだよね? 僕ね! いっぱい食べてくれる人好きだよ!」
「……そうですか」
などと他愛もない会話でも、メジロマックイーンは確かに。
(……不思議な方ですわね)
それからも、メジロマックイーンとシルバーバレットの関係は続いた。
ある時は一緒にスイーツを食べに行ったり、またある時は共にトレーニングをしたり。
けれど。
「…!」
ふと、気がついてしまった。
シルバーバレットが、自分を通して『誰か』を見ていることに。
それはシルバーバレット自身も気がついていない無意識で、今までもこれからも知ることはない。
しかし、メジロマックイーンには分かってしまった。
(……あぁ)
それは、その『誰か』は。
「マックちゃん?」
「いえ、なんでもありませんわ」
「……そう?」
そんな自分の感情に蓋をして、メジロマックイーンは微笑む。
そして、そんな自分をシルバーバレットが心配そうに見ていることにも気がついていた。
(本当に、あなたは)
あの日、浮き足立った自分がバカのようだった。
分かっていた────思い出したから。
分かっていた────自分とシルバーバレットが関わるようになった"接点"から。
分かっていた────自分が
「どうせ、ですか」
「何が?」
「こっちの話です」
「…?」
【名優】:
メジロマックイーン。
途中で思い出した。
それまでは僕に可愛がられて浮き足立ってたけど…?
『誰か』がいなければ僕と関わることはなかったウマ。
『誰か』と僕の仲睦まじさを誰よりも知っており、またその輪にいた。
仲良しではあるけど隔絶はある…みたいな?