さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

701 / 1416

期待、してしまった。



【名優】いわく、

そのウマに話しかけられた時、メジロマックイーンは少し浮き足立った。

なにせそのウマ──シルバーバレットは誰もが知る有名人であるから。

誰からも声をかけられ、慕われ、無自覚ながらも上に立つ者。

しかしあまり他人を傍に寄せつけない孤高の存在。

だが、

 

「マックちゃんマックちゃん」

 

その浮き足は、直ぐに地についた。

まるで懐きに懐いた犬のように自分に走りよってきては、な孤高の存在(であったはずの人)にメジロマックイーンは困惑を隠せない。

 

「な、なんですの?」

「マックちゃんって、ハンバーガー好き?」

「え? えぇ……まぁ」

「じゃあさ、今度一緒に食べに行こうよ!」

「……は?」

 

思わず耳を疑ったが、シルバーバレットは構わず続ける。

 

「僕ね! そろそろ出るはずの季節のメニューですっごく楽しみなのがあるんだよ! だから!!」

「…………」

 

そんな無邪気な笑顔を見てしまえば、メジロマックイーンはもう何も言えなかった。

ごくありふれた友人のように、親しげに話すシルバーバレット。

そのウマの言動に、メジロマックイーンは困惑しつつも、どこか心が温まるような気がした。

 

「マックちゃんって、結構食べるんだよね? 僕ね! いっぱい食べてくれる人好きだよ!」

「……そうですか」

 

などと他愛もない会話でも、メジロマックイーンは確かに。

 

(……不思議な方ですわね)

 

それからも、メジロマックイーンとシルバーバレットの関係は続いた。

ある時は一緒にスイーツを食べに行ったり、またある時は共にトレーニングをしたり。

けれど。

 

「…!」

 

ふと、気がついてしまった。

シルバーバレットが、自分を通して『誰か』を見ていることに。

それはシルバーバレット自身も気がついていない無意識で、今までもこれからも知ることはない。

しかし、メジロマックイーンには分かってしまった。

 

(……あぁ)

 

それは、その『誰か』は。

 

「マックちゃん?」

「いえ、なんでもありませんわ」

「……そう?」

 

そんな自分の感情に蓋をして、メジロマックイーンは微笑む。

そして、そんな自分をシルバーバレットが心配そうに見ていることにも気がついていた。

 

(本当に、あなたは)

 

あの日、浮き足立った自分がバカのようだった。

分かっていた────思い出したから。

分かっていた────自分とシルバーバレットが関わるようになった"接点"から。

分かっていた────自分が█████████(×××××××××)になれるわけない、と。

 

「どうせ、ですか」

「何が?」

「こっちの話です」

「…?」





【名優】:
メジロマックイーン。
途中で思い出した。
それまでは僕に可愛がられて浮き足立ってたけど…?
『誰か』がいなければ僕と関わることはなかったウマ。
『誰か』と僕の仲睦まじさを誰よりも知っており、またその輪にいた。
仲良しではあるけど隔絶はある…みたいな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。