心に焼き付いたまま。
その笑顔が、こちらに向くことは一生ない。
ひょんなことから執着した相手は、愛しい人を亡くして遠に時間が経ってしまった人で。
しかも相思相愛に、また件の愛しの人からも『次を見つけてくださいね』ならぬ『ずっと私だけを想ってくださいね』という念押しをされている。
「まぁ、言われなくてもって感じだケド」
さすがのあの子にそう言われるってのは心外だったなァ、なんて。
ぽぉ、と昔を思い出す目をして、こっちを見ない目に内心で黒いモノが鎌首をもたげる。
「でも、こんな素敵な友だちできたんだ〜って紹介したいな」
ね、ザンさん?
*
はじめは、その走りに魅せられただけだった。
自分たちとは違う、荒削りで野性的な走りに。
その走りを支えるものが作れたら、と。
でも、
「おいでヨ、ザンさん。ご飯食べていって!」
引き込まれて、輪に入れられて。
そこがまぁ何とも温かくて、ふわふわするようで。
「ザンさん、これお願いしていい?」
「おぅ」
「あ、それ終わったら箸とか運んでー」
「ん?あぁ、わかった」
最初は手伝いだったのが、いつの間にか中心になってて。
「はい!これ持っていってネ!」
「……俺ァガキじゃねェぞ」
「けど一人暮らしじゃん」
…とかいうやりとりすら楽しくて。
だからつい、欲が出たのだ。
「な、に?」
さらりと触れた頬は少しざらついた傷跡の感触があって。
「ザンさん、ゃ……」
「……ッ」
ばッと振り払った手。
それは、触れてはいけないところだったのかもしれない。
「あ、いや……すまねェ」
「ううん、こっちこそゴメンネ」
体中傷だらけだという。
それは夏場に「暑いから」と着流しを脱いでホースから直接水を浴びている際に幾度となく見た。
その傷は、身体に残るそれは、きっと彼の人生そのものだ。
故に。
「こればっかりはさァ……ねェ?」
だから触れてはいけないのだ、と暗に示されて。
それでも諦められないのが…。
(救いようのねぇこって)
*
『…?その傷をどう思うか、ですか』
己の体に刻まれた傷。
家の連中は自分と基本同じなのでどうともなかったが、外の世界にひとたび出ると向けられるのは好奇とか哀れみとかの煩わしい感情。
好きでこうなったわけじゃなくて、哀れんでもらいたいんじゃなくて。
ただ、普通に生きていきたいだけなのに。
(……?)
けど彼女は違った。
『傷もあなたを構成する一部です。…素敵ですよ』
そう言ってくれたのが、彼女だけだったから。
だからその傷が誇らしかったし、何より彼女の前では隠さなくていいことが楽だったのだ。
(……いやァ)
それはきっと、今も変わらないのだろうけれど。
【先祖返り】:
ホワイトバック。
体は傷だらけ。
若くして亡くなった妻【白猫】のことをずーっと愛しており、それは今でも変わらない。
相思相愛。
それはそれとして、【
孫が孫ならコイツもコイツでニブチンである。