さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ウマ世界だと死んでも忘れられることなく神格化されてそうだよね、と。



寺へはやらぬ

『僕が亡くなったら、骨も全部粉にして海にでも撒いてよ』

 

世間話の一環のように話された『お願い』であった。

年老いた今もなお世間から忘れられることなく、逆に年が経つごとに「生きる伝説」としての評価は高まっていき。

 

『どこかの誰かに盗まれて神として祀られるとかなったらゴメンだからね』

 

ふへ、とした笑い顔はいつも通り。

それとなく何度も繰り返した問答はいつだって「そんなこと言わないでください」で終わって。

それで。

 

「ハイセイコ」

「…」

 

しんみりとした、夜。

厳重に、身内だけでした葬儀はつつがなく終わり。

 

「ハイセイコ」

「…ヒーローなら、いいか」

 

ひとり、ぽつねんと。

元は父の仕事部屋だったソコを引き継がされた新当主である長子-シロガネハイセイコが中々帰ってこない自分を探しに来た右腕であり"きょうだい"-シロガネヒーローを手招く。

 

「ソレ…」

「あぁ」

 

机の上には、箱があった。

綺麗な箱だ。

そしてその中には───。

 

「…三分の一、いや四分の一か」

 

蓋が開けられ、ザラザラと。

 

「ヒーローだから、特別」

 

分けられた粉。

その少しが杯に入れられ、続きざまにぽつぽつと透明の酒が注がれて。

 

「献杯」

「…献杯」

 

ひと口ぶん程度の量がざらりと入っていく。

 

「ヒーロー」

「……なんだ?」

「シロガネの家は、私が継ぐよ」

「……あぁ。頼む」

「だから」

 

ハイセイコがそうするように、ヒーローも杯を一気に煽り、飲み干した。

こくり、と喉が動く。

 

共犯(道ずれ)に、なってくれ」

 

空になった杯に、もう一杯が注がれる。

 

 

シロガネハイセイコが知らぬことを、シロガネヒーローは知っている。

喪主として慌ただしく動いていたシロガネハイセイコが知らぬことを、知っている。

 

「…」

 

かのウマが、すべてすべて燃えたあと。

親族の中でも、自分たち-かのウマの子どもたちだけが集まったところで。

シロガネハイセイコがやって来るまでの少しの間。

 

───ぺろり。

 

指先ひとつ分。

愛した、かのウマの。

誰の、一番でもあってくれなかったウマの。

⬛︎を、子どもたちは舐めた。

 

それを、シロガネヒーローは見ないフリをした。

どうせ、かのウマに救われた自分たちの思考は似たり寄ったりなのだ。

どれだけその行為が道徳や倫理から逸れていても、それを糾弾できる資格は…ない。

 

自分のモノになって欲しかった。

誰よりもやさしい人。

自分を救ってくれた、大切な人。

愛している。

愛していた。

故に。

故に。

愛、ゆえに。

 

────舐めて、飲み干し。





【銀色のアイドル】:
シロガネハイセイコ。
【銀色のヒーロー】を共犯者にした。
「怒られるだろうなぁ」と思いつつも止められなかった。
愛している、愛していたから…故に。

────これで、ずっと一緒。
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