さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ふだんはかわいいけれど。



猫は肉食である

懐かない猫であると共に、虚ろのように掴みどころのない存在である。

それが、シルバーバレットに執着を向ける者たちの、シルバーバレットの評価であった。

ごく一般が『やさしい』と評するように優しく、しかしごく一般が眉をしかめるだろうほどには残酷で。

憎らしいほどの笑顔で、他人を慈しみ、他人を食い荒らし散々にする様には…。

本人からしてみれば、ちょっとのつまみ食いにしか過ぎない。

だがそのちょっとのつまみ食いが、他人を狂わせる。

まるで口をつけたところから唾液が染み渡るように。

まるで毒が回るように。

その狂気は、シルバーバレットを目にした全てに伝染する。

そして……。

 

「?」

 

キラキラと輝くお星さま、もしくは総てを舐めて焼き尽くす地獄の業火か。

でも、そうでありながらキョトンとあどけない顔をして定型句みたく穏やかな笑みを浮かべるので、その落差がまた恐ろしい。

 

「う~ん……」

 

シルバーバレットは腕を組みながら唸った。

それはまるで、お気に入りの玩具を取り上げられた子どものような仕草で。

 

「やっぱり、ちょっと違うんだよねぇ」

───……なにが?

「いやね?確かに僕は可愛いけど……。でもさ?僕ってほら、もっとこう……なんていうの?ミステリアスじゃない?」

 

シルバーバレットはそう言うと、自らの体をチラチラと見やる。

「え、どこからどう見てもミステリアスだろ。全身真っ黒だぜ僕」だの何だのと、シルバーバレットはブツブツと呟いた。

 

───まぁ。

「うん?」

───似合ってるよ。

「そう…?えへへ」

 

 

「あの子、いい走りをするなぁ」と思ったが最後、どうにも気もそぞろとなってしまう。

それはウマという生物としてのサガか、それとも己が魂のサガか。

詳しいところはよく分からないが、そういった琴線に走るモノを見ては気分が高揚することは…確かだった。

がしかし。

 

「……、」

 

有名人になるのも、考えものである。

僕としては普通にしてほしいのだけど、シルバーバレット(ぼく)というネームバリューがそれを許さない。

 

「はぁ、」

 

尊敬してますとかけられる声。

たくさんの人が我も我もと集ってくる様子はどこの客寄せパンダだって。

で、集られるものだからお目当てのあの子に近づきたくても近づけず。

 

「こんにちは」

 

やっとこさ近づけたのは30分強経ったころ。

声をかけるとビクリと震えた体に警戒を解くように笑って。

 

「ね、僕と走ってみない?」

 

手招きする。

あぁ、我ながら悪い人だとは思うけれど。

 

「ねぇ?」





僕:
シルバーバレット。
老若男女問わずキラー。
こいつの些細な行動で勝手に周りが堕ちるとも。
しかし気づかないのが銀弾クオリティ。
いつも通りです。
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