さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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影は在り。



遠き地に、

俺にアメリカ留学の話が来たのは日本のトレセン学園を受験する少し前のことだった。

 

「えぇ?アメリカぁ?」

『うん、どうかな』

 

そう誘ってきたのは叔父であるサンデースクラッパで「住む場所は用意するよ!」と気前よく言ってくれた。

アメリカ、アメリカかぁ…。

たしかにちょっと興味はあるかも?

でも英語……大丈夫かな?

うーん……。

でもせっかくだし行ってみたいなぁ。

母さんも母さんで「あなたの思うようにしなさい」「それにスーちゃん(※サンデースクラッパのこと)が預かってくれるなら安心ね」とか言いそうだし…。

よし。

どうせなら行くだけ行ってみよう!

それで合わなければまた考えればいいんだから!

というわけで僕-シェイクザシャドーのアメリカ留学が決まり。

 

「シーちゃん、こっち手伝ってくれないかなー?」

「あ、はいー!」

 

現役を引退した今もアメリカにいる。

まぁ、時折は日本に帰ってるんだけどね。

 

「やっぱ日本のご飯がいちばん美味しいよねー」

「ですよねー」

 

ちなみに僕は、叔父であるサンデースクラッパの家で暮らしている。

叔父の家、といっても叔父の知り合いが用意している家に一緒に同居させてもらっている感じというか…。

 

「じゃあ行ってくるよシーちゃん」

「はい、行ってらっしゃいおじさん」

 

僕の朝の仕事といえばこうして叔父を見送ることから始まり。

そしてお昼まで掃除洗濯料理etc……といった家事全般をこなすのだ。

あとは近所のスーパーへ買い物に行ったり、散歩したり、結構好き勝手している。

すると、

 

「パパ!」

「うわっ、とと…」

 

僕の姿を見つけたらしい我が子のひとりが飛びついてきた。

名前はシェイドナイト。

もうそろそろトレセン学園に入学するという歳だが同年代の子と比べてもだいぶ大きい。

そして可愛い。

そんな子どもに抱きつかれた僕は、その頭を優しく撫でてあげる。

 

「ねぇ、パパ!」

「ん〜?」

「走り方教えて!!」

「…うん」

 

きゃらきゃらと楽しげに笑って「パパが走り方教えてくれるって〜!」と駆けていく子どもを微笑ましく見ながら、僕は小さく息をつく。

……ふぅ、走るか。

 

 

シーちゃん-シェイクザシャドーをこちら側に呼んだのはそうさしたる理由があったわけではない。

ただ、何となく誘ってみただけ。

それが、

 

「あ、おじさん。来てたんですか」

 

底の見えない走りだった。

必死さの欠片もなく、まるで流しているかのごとく、軽々と…。

 

「あの子、キミそっくりだね」

「…そう?」

 

【2001.10.27 BCジュヴェナイルにて】





【影を振り払い】:
シェイクザシャドー。
父ナリタブライアン母シルバフォーチュン。
1999年生まれの黒鹿毛牡馬。
適正は芝AダA。短CマA中A長B。逃C先A差A追B。
主な勝ち鞍はBCジェヴェナイル(2001)など。

穏やかな性格だがどっちかというとビビり。
日本生まれ日本育ちではあるが、叔父であるサンデースクラッパの誘いに乗りアメリカ留学を果たす(なお史実ではサンデースクラッパからの繋養先に買い取られ渡米→デビュー)。
そしてそこで芝とダートの二刀流として活躍し、現地で種牡馬入りした。
産駒も彼と同じように芝とダートの二刀流できるのが結構な頻度で出るとか…?
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