さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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元から知り合いっていう。



たったひとりの

己が変わり者であるという自覚が、白峰(ふひと)には生まれながらにあった。

きっと『普通』の家ならば厭うて捨てられるだろうと子どもながらに思うほどには、彼は『普通』と違っていて。

子どもらしくない子どもというか。

そもそも人間らしくない、というべきか。

 

「……」

 

虐められるなんてしょっちゅうだったし、それを大人は見て見ぬフリした。

なにせ、(ふひと)は『普通』とは違ったので。

骨が折れても、血が出ても、顔色ひとつ変えず、薄らと微笑むばかり。

「こんなこと、しちゃダメなんですよ」と聞き分けの悪い子どもを諌めるような声音で言葉を吐くが、その実、彼は気にしていない。

ただ、彼が「こうしなくては」と学んだことを告げているだけ。

だから『普通』は彼を気味悪がった。

 

「……」

 

史《ふひと》はそんな『普通』のことなどどうでもよかった。

だって、彼にとっての『普通』とは、彼ではない誰かのことなので。

彼の思う『普通の人』はきっと、こんな人間ではないのだろうから。

そんな自分がおかしいことを、彼は自覚していて。

そんな自分が助けられないことを、知っていて。

 

「なにやってンだ、お前ら」

 

知っていた、のに。

 

「お天道様に顔向け出来ねぇコトするんじゃあねぇ!日本男児として恥ずかしくねェのかテメェら!!!!」

 

そう吼えた少年は瞬く間に(ふひと)を虐めていた誰かたちをぶっ飛ばした。

そうして乱雑な手つきで(ふひと)の手を引っ掴み、家へと連れ込んで。

 

「え、あ、あの…そういうの、いいので」

「頭から血ィ流して何言ってやがる」

「あぅ」

 

家族以外から初めて送られる優しさという奴にしどろもどろになる(ふひと)を、少年は手拭いで軽く止血しながら叱りつけて。

 

「ガキが遠慮すンじゃあねェよ」

 

そう、不遜に笑った。

その笑顔が眩しくて、美しくて。

 

「……ありがとう、ございます」

 

(ふひと)は生まれて初めて『普通』の誰かへ感謝の言葉を口にしたのだった。

それが白峰(ふひと)と白銀(あまね)の出会いであった。

 

変な人だなあと思った。

いや、今も思っている。

連れ添っている妻だって、親戚の、自身の異常を理解している女性だ。

けれど(あまね)だけはそんな(ふひと)を「普通」だと言って憚らない。

『普通』の人はそんなこと言わないと何度言っても彼は聞かない。

 

「テメェが普通じゃなくても俺は驚かねェよ。驚くとしたら周りのバカ共に、だ」

「……なにそれ」

 

だからお前はお前の思う『普通』でいいのだと彼は言う。

 

「そういうこと言うの、(あまね)だけだよ…」

「だろーな」





白峰(ふひと):
白峰おじさんのパパ。
とある村に住んでた。
一族ぐるみで村人に遠巻きにされ、時には理不尽な暴力も受けていたが、そんな時に村の地主の子である白銀(あまね)に助けられ、世話を見られるようになる。
テンションとかそういうの的には某物語シリーズの扇ちゃんみたいな感じ。

白銀(あまね):
初代白銀馬主。
√によっては【白猫】と【先祖返り】を所有するヒトミミ。
(ふひと)の世話をよく見ていた。
(ふひと)より一歳年上。
いちおう地主の子であり、後々父親が都会でやってる会社を当主の座と共に継ぐ。
意外と口が悪い人。
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