さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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分かっているふり。



感情は虚ろ

「ただの個人的な趣味と興味さ。───復讐鬼と呼べるほど高尚なものじゃあないよ」

 

はァ、と煙草の煙が吐かれる。

薄く開いた瞼から覗く瞳は寒々しいほどに昏く。

その様子には、たしかにダークスーツがよく似合っていた。

 

「さて、話を戻そうか。キミは血筋の存続をと願った。その願いを私がたまたま聞き拾ったわけだが───」

 

……いや、訂正しよう。

ダークスーツも似合ってはいたが、それはあくまで外面だけだ。

中身は空っぽだ。

空虚な器だ。

そんな人間が復讐鬼を名乗るなんて笑い話にもならない。

 

「はっきり言うぞお嬢さん。私はこの話に乗り気じゃない。そもそも張った惚れたが不得手なんだ。好きな相手がいるならそっちに頼みたまえ」

 

けほ、とまた煙が吹き出される。

甘い香り。

甘ったるい、香り。

まるで───悪魔のような。

 

 

「はァ…」

 

この"仕事"をはじめてから、自分でも自分に苦言を呈してしまいそうになるほど煙草の量が増えた。

たしかに吸い慣れた味ではあるがこうも吸っているとどことなく食欲の減退を感じる。

…人間って、煙で腹膨らむ生物じゃないのにな。

 

「そろそろ食べ物の味もよく分からなくなりそうだ」

 

頭を搔くとセットしていた髪が崩れる。

…まぁいいか、もう予定は無いのだし。

 

『好きな相手がいるのなら』

 

ぽつねんと。

先程自分が告げた言葉が頭の中に反響する。

 

「…どの口が」

 

自分自身がよく分かってないくせに。

"仕事"だと、相手の感情を踏みにじっているくせに。

 

「どの口が、好きな相手を慮るんだ」

 

そもそも自分は、その感情すら分かっていないというのに。

 

「───はァ」

 

ため息をひとつ。

煙草の火を消し、仕事終わりで凝り固まった体をほぐす、と。

そこでちょうど端末に着信が入った。

相手は───。

 

『終わったか?』

 

ああ終わったともさ。

これであのお嬢さんとの契約終了だね? ……なんて文句を言えるわけもなく、素直に返事を返す。

 

『じゃあ、飯食いにいこうぜ。肉』

 

元気だな、と。

呆れながらも、少しだけ気が楽になった。

 

「ああ、いいよ。行こうか」

『よし決まりだ』

 

……さて、と。

端末を懐にしまい込んで、私は仕事場を後にする。

……そういえば、結局あのお嬢さんの名前を聞くのを忘れていたな。

 

「ま、いいか」

 

たぶん、どこかで知るだろう。

いや、もしかするとこれから会う親友が誰かを教えてくれるかもしれない。

己が『興味無い』と言えば、呆れながら教えてくれそうだ。

たぶん、きっと、メイビー。

 

「…ちょっとおなかへったな」





僕:
シルバーバレット。
お仕事モードなのでかしこまった喋り方。
相手を慮りつつも自分がその感情わかってないのになぁ…の気持ち。
なので少し鬱屈してるとか。
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