さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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強過ぎたが故に体良く追い出されたウマと道半ばで終わってしまったウマの諦め日常。



ピリオドはうたれない

「バケモノが人間と共にあろうなんて、バカげてるじゃないか」

 

そう告げた貴方の瞳は、諦めきって、昏く澱んでいた。

讃えられる強さも、強すぎてしまっては破綻する。

あとに残るのは、畏敬を超えた恐怖だけ。

あれほどの賞賛も、いつしか手のひら返しに。

ある程度の『強さ』で良かったのに。

 

「強すぎちゃったネ、我ながら」

 

石を投げられてはいない。

けれど、似たような状況ではあった。

言葉なくとも、伝わることはある。

 

「でも、それが人間だからネ」

 

諦めきった貴方の瞳を、俺は知っている。

 

──俺が鏡で見るのと同じ瞳だ。

 

その目をした人は、大抵同じことを言う。

『もういい』と。

『疲れた』と。

『諦めた』と。

貴方は俺に諦めるなと言ったけれど──。

 

(俺も貴方も、きっともう諦めてる)

 

くだらない日常だ。

起きて、飯食って、風呂入って寝る。

それの繰り返し。

食事も似たようなモンしか食わなくて、ただ生きるためのもので。

風呂は面倒だから、シャワーで済ませる。

寝床も似たようなモンで、ただ寝るためのもの。

本当にくだらない日常だ。

そんな毎日を過ごしていても、生きていられるのが不思議だ。

きっといつか終わるんだろうと漠然と考えていたけれど──案外終わらないものだ。

 

「……どっか行くか?」

「……どこへ?」

 

買い物も便利な時代になったもので、服も食料も、全部届けて貰っているから。

 

「そうだなぁ……海でも見に行くか?」

「……なんでまた」

「なんとなく、だ」

 

車を走らせて、国道を南下する。

その間も、俺達は他愛もない話をしていた。

 

「そういえばアンタ、免許は持ってるのか?」

「一応。取ったのはだいぶ昔で、ペーパーだが」

「そうか……」

 

ミラーに映る顔は、ふたりして、見る人によればこれから心中でもしにいくのではと引き止められそうなほど酷いもの。

 

「…」

他人(ひと)、いなくてよかったな」

「そうだね。…サーフィンとかされてたらたまったもんじゃなかったよ」

 

人っ子一人いない海岸でぼうっと、車に寄りかかりながら海を見る。

特に美しくも何ともない海だ。

砂浜にはゴミが散乱して、海も汚れている。

 

「汚いな」

「うん、汚い」

 

それでも、波の音と潮の匂いは心地よかった。

 

「……なぁ」

「ん?」

「俺さ、アンタとの生活、イヤではないよ」

「そうかい……」

 

無言で、海を眺める。

くだらない日常の1ページ。

けれど、今日はなんだか…。

 

(今日のことは、これからずっと覚えてそうだ)

 

どことなく、そう思った。

 

「ねえ、」

「おう」

「お腹へった」

「…へーへー」





惰性で生きていっている伯父と甥ですね。
もはや食事すら気にかけなくなったのでこれは重傷です。
また親類縁者にも今自分たちが何処にいるか伝えてないでしょうね。
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